『舞いあがれ!』が問いかける“ふつう”や“真っ当” 2組の親子の描き方から見えた現代性

『舞いあがれ!』が問いかける“ふつう”

 “朝ドラ”ことNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の第18週は「親子の心」で、舞(福原遥)とめぐみ(永作博美)、久留美(山下美月)と佳晴(松尾諭)の母と娘、父と娘の関係がやさしくあたたかく描かれた。舞とめぐみは対比、久留美と佳晴は共鳴と、それぞれ違う形ながら、最終的にはどちらもさらに絆を深めていく。

 舞とめぐみは、会社の経営について意見が異なる。舞は、父・浩太(高橋克典)の夢を引き継いで航空機部品づくりに参入しようと張り切るが、めぐみはチャンスを前にして航空機部品を作ることを選択しない。めぐみはかつて浩太が夢に向かって頑張り過ぎて身体を壊して亡くなったこと、その前後に、多くの従業員につらい思いを味あわせたことを、経営が順調になったいまも忘れていなかった。めぐみ自身が若い頃、浩太の仕事を手伝っていたとき、かなり追い込まれて心身共に疲弊していたので、大きな夢を持ってもいいけれど、身の丈にあったものでありたいと考えたのだろう。「夢のある話には必ずリスクを覚悟しなければなりません」とめぐみは言う。

 一方、舞は、思い立ったが吉日とばかり、後先考えずに猛然と向かっていくタイプ。飛行機を作りたくて大学で航空工学を学んでいたが、パイロットになりたくなって大学を中退してパイロットの訓練校に入る。そこで航空会社に内定したが、リーマンショックも手伝ってIWAKURAの後を継ぐことを選ぶ。その結果、恋人・柏木(目黒蓮)とも進む道が違ったことを理由に別れる。会社では夢の航空機部品を作るチャンスを得たものの、現時点では自社では大量生産できないのが現実で、なぜ事前にそのへんの問題を考えないのかという声がSNSであがっていた。「チャンスの神様には前髪しかない」と言われる。それまでにコツコツと努力してきたことによってチャンスをものにできるのだ。最近だと『大奥』(NHK総合)で注目された冨永愛が、いつか時代劇に出たくて乗馬を練習していたことが番組で役立ったというエピソードがSNSで支持された。やはり、努力が報われることをひとは好むのである。

 やりたいことをまずはじめて、不足の分をあとから周囲に頼るやり方は、若いうちはいいけれど、めぐみくらいになるとそうも言っていられなくなるものである。舞とめぐみの選択は世代の違いも感じさせるものだった。

 舞とめぐみの関係性で興味深いのは、舞は「かっこいい」とめぐみを認め、めぐみは「怒られるかと思った」と言うふたりのやりとりである(第85話)。視聴者的にも舞が、消極的なめぐみに反発するのではないかと思ったが、舞はおっとりして、決して怒らない。親子喧嘩にはならないのである。

 久留美と佳晴も親子喧嘩にならない。久留美は八神蓮太郎(中川大輔)と婚約したものの、八神の母・圭子(羽野晶紀)に佳晴が定職についていないことを理由に破談を言い渡される。顔合わせに、カジュアルな店・ノーサイドを選んだことも批判されるが、佳晴としては、高級店だと緊張して話ができない、少しでも自分のいい面を見てもらおうという考えだったが、そんなことは相手に理解してもらえない。この場合も、久留美が父のせいで破談になったと怒りはしなくても、悲しむのではないかと想像するが、久留美は父を慮り、むしろ、父を認めない家には嫁がないことを選択する。

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