『ブラッシュアップライフ』細部にこだわった演出の妙 続きが気になる仕掛けを紐解く

『ブラッシュアップライフ』の仕掛けを紐解く

 「今日、もう少し早く起きれば」という直近のものや「学生時代、もっと勉強しておくんだった」というような過去の後悔まで、「あの時、ああしていれば」という思いは誰だって多少なりとも抱くもの。現在放送中の『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)は、主人公の麻美(安藤サクラ)の姿を借りながら、そんな思いを少しだけ、ちょっとおもしろく昇華できるドラマだ。

 まず、感心するのが麻美の冷静さだ。もし、「今の記憶を保ったまま、人生をやり直せます」と言われたら、「ラッキー!」と舞い上がったりうっかりしたりして、乳児期のうちに言葉を喋ってしまいそうだ。でも、麻美は、やり直せて嬉しい気持ちはありながらも、“徳”を積むために、着実に2周目の人生を歩んでいく。

 たとえば麻美は、玲奈ちゃんのパパと保育園の先生の不倫を阻止しようと自宅の電話から玲奈ちゃんパパのポケベルへメッセージを残そうとするが、ここでふと「電話番号は通知されないのか?」と思いとどまるのだ。現代で主流となっているスマートフォンのことを考えてのことだろう。深夜のテンションや「これで“徳”が積めるぞ!」の興奮も抑えての冷静な判断だ。気がついてはっとし、“無”の表情で受話器を置く、保育園児・麻美(永尾柚乃)の表情も絶妙だ。淡々と今の状況をしっかりと把握、分析する安藤のナレーションと保育園児としては大人びた表情を見せる永尾の演技は、まさに“人生2周目”を感じさせ、笑いが込み上げてきてしまう。

 そんな中でも麻美本来の性格である、のほほんとしたところは健在。自宅からではなく、公衆電話からポケベルへメッセージを送ろうと決めた麻美は、公衆電話の場所を、人生1周目での妹・遥(志田未来)との会話で思い出す。また、中学時代には、恨み言を言っていたにもかかわらず、1周目と同じくゲームボーイアドバンスを三田(鈴木浩介)に没収されてしまう。その変わらない麻美っぽさもまた笑えてしまうところである。

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