『100万回 言えばよかった』佐藤健の壮絶な過去に胸を痛める 懸命に愛を叫んだ井上真央

『100万回 言えばよかった』直木の過去

「わたしは伝えられるから言う。返事なんかいらない。あなたが好きです。理由なんかない」

 その場にいるかどうかわからない。姿も見えないし、声も聞こえない。それでも言わずにいられなかった。伝えないといけないと思った。この世界で、あなたをただ好きな人がいるということ。なぜなら、愛しい人が実の親から利用価値があるという理由だけで求められていた過去を知ってしまったから。

 金曜ドラマ『100万回 言えばよかった』(TBS系)第3話は、悠依(井上真央)も知らなかった直木(佐藤健)の家族について明かされた。依然として行方がわからない直木が、殺人事件に関与していると見た警察は、担当刑事の譲(松山ケンイチ)に直木の父親に話を聞きに行くように指示する。譲が向かう場所には直木も自然とついていくことになる。思わぬ形の父親との再会(?)となった直木だが、父親の口から語られる言葉はまるで直木の存在を気にかけていないものだった。

 なぜ、直木が里親の家に行くことになったのか。それは、年の離れた弟が難しい病気になってしまったことがきっかけだった。いつも目の前の状況を冷静に観察していく直木は、両親よりもずっと精神的に大人びていたという。だからこそ、父親はそのプライドを守るために直木に力で優位に立とうとしたのかもしれない。ひどい暴力を受けていた直木は自ら里親制度を利用しようと動いたようだった。

 そんな直木の居場所を探して、母親が悠依を訪ねてきた。父親との関係性は最悪だったとしても母親は悠依と同じように心配しているのかと思われた……が、その本音は弟の骨髄液ドナーである直木を手放すわけにはいかないと考えてのことだった。直木が家を出た後も、唯一母親から連絡が来たのは、弟の病気が再発したときだけ。再度、骨髄液を提供するように頼むためだけだったというから直木がどれほど傷ついたかと悠依は胸を痛める。

 里親の家で出会った悠依と直木。お互いの家庭の事情についてはあえて聞かないようにしていた。それが暗黙のルールになっていたようだ。なぜなら、そこには必ずお互いの痛みがあるからだろう。あえて、そこに触れて痛みを思い出させる必要はないと思っていたのではないか。そして、自分自身の痛みも相手に話すことで嫌な気持ちにさせたくないと考えてのこと。

 だが、直木の事情をもっと早く知ることができたなら、悠依は直木を強く抱きしめることができた。何かの条件を満たしているから近くにいたいのではなく、ただただ好きなんだと。でも、それができない今、悠依はたまらず見えない直木に向けて思いを言葉にする。もしかしたらそこにはいないかもしれないけれど。だとしても幽霊としてまだ意識が自分の周りにいる可能性があるのなら、伝えずにはいられなかったのだ。

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