『女神の教室』北川景子と山田裕貴が用いる教育方法の違いとは? 元学生が語る法科大学院

『女神の教室』元学生が語る法科大学院

 『女神の教室~リーガル青春白書~』(フジテレビ系)を観ていると、あの頃のことを思い出して苦しくなる。最初に断っておくと、筆者は法科大学院に在学歴があり、本作には既視感のある光景が繰り返し登場する。本稿では法科大学院のあらましや教育について元学生の立場から言及することで、『女神の教室』をより楽しむための材料を提供したい。

 いきなりネガティブなコメントをしてしまったが、法科大学院に対して抱く印象は人によって異なる。司法試験に合格した者にとっては輝かしい青春の1ページとして記憶に刻まれているだろうし、現に在籍している人には今ここにある現実として立ちはだかっているに違いない。法律家になるための通過儀礼であり訓練を受ける場として、法科大学院はそこに居合わせた人々にある種の共通体験を強いる。冒頭で述べた感慨は、本作が実像に迫っていることの証明である。

 法科大学院/ロースクールは、2000年代の司法制度改革で設立された比較的新しい制度だ。法科大学院はビジネススクールや教職大学院と同じ専門職大学院で、標準修行年限は3年ないし2年。裁判官・検察官・弁護士の法曹三者になるには司法試験に合格する必要がある。法科大学院ができるまでは司法試験に一発合格して司法修習を終えれば法律家になれたが、創設後は法科大学院を修了しないと司法試験の受験資格が得られなくなった。例外的に予備試験に合格すれば受験資格が得られるが、合格率4%と難関であり、多くの学生が法科大学院の門を叩くことになる。2023年から最終年次での在学中受験が開始予定で、より柔軟な制度に変わりつつある。

 法科大学院の学生層は多彩だ。年齢の上限や出身学部の制限がないため、20代から60代、社会人経験者から飛び級で法学部を出たばかりの者まで様々な学生が集う。『女神の教室』では若い学生が中心だが、夜間や社会人に特化した法科大学院もあり、広く門戸が開かれているのが特徴。教える側も多士済々だ。一口に法学と言っても学際領域を含めるとその範囲は広く、法学の専門を極めた研究者、裁判所や検察庁からの派遣や現役弁護士の実務家教員、企業や行政機関に所属する教員もいる。法学は現実社会で役立つ実学であるため、日々アップデートされる知見が教育内容に反映されている。

 法科大学院の授業は文科省が定めるコア・カリキュラムに準拠しており、どのロースクールもある程度共通した指導が行われているが、それでも大学院ごとに特色はある。ロースクール教育に力を入れる一つの要因として、国の補助金が実績によって加算される点が挙げられる。評価は司法試験の合格率によって左右されるため、各大学院が一人でも多く合格者を出そうとしのぎを削る構図が生じる。

 『女神の教室』は以上のような状況を反映している。主人公の柊木雫(北川景子)は東京地裁から派遣された実務家教員で法科大学院出身。雫と何かにつけて対立する藍井仁(山田裕貴)は東大在学中に予備試験・司法試験に合格し、研究者の道に進んだ秀才だ。メイン2人のキャラ設定に現行制度のあらましがコンパクトに詰め込まれている。

 合格率下位の青南ローで試験合格を最優先する藍井のスタンスは、法科大学院の存続という観点から合理的だ。優秀な学生を自主ゼミで鍛える藍井はエリート主義で冷淡に感じられるが、自らの研究に充てる時間を教育に割いており称賛されるものである。雫に対する態度など、少々人間性に難があることは否めないが、ポリシーが明確な分、学生にとって親切といえる。

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