『舞いあがれ!』に“章兄ちゃん”が戻ってきた! 葵揚が放つ重要人物としての存在感

『舞いあがれ!』葵揚のダークホース的存在感

 放送中の朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合)に“章兄ちゃん”こと葵揚が戻ってきた。福原遥が演じるヒロイン・舞たちの、そして、彼女らを応援する私たち視聴者の願いが届いたようだ。これまでずっと本作に寄り添ってきた彼の存在が、ここにきて一気に大きなものとなりつつある。舞の実家にして勤め先の「IWAKURA」の再起は、葵こそが握っているのではないか。

 舞の父で「IWAKURA」の社長だった浩太(高橋克典)が亡くなって以降、暗澹たる状況が続いていた本作。世界規模での経済不況によって傾いた「IWAKURA」はリーダーも失い、絶望的な局面に立たされていた。それでも、母・めぐみ(永作博美)も舞も自らを奮い立たせ、「IWAKURA」の面々にまだ戦えるのだと態度で示してきた。そのような中、舞が初めて営業に成功して新規の仕事を獲得。光明を見出したかに思えたものの、クライアントの求める複雑なネジを設計できるのは、他社に転職してしまった“あの人”しかいない……。

葵揚、『舞いあがれ!』で確かな演技力を証明 古舘寛治との一コマは劇中屈指の名シーンに

年末年始の中断期間を経て、1月4日より再開したNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』。物語は、主人公・舞(福原遥)の父・浩太(高橋…

 この“あの人”こそ、葵が演じる結城章のことである。毎回の出番は短いものの第1週から頻繁に登場しているため、私たち視聴者にとってはお馴染みの存在。「IWAKURA」が「岩倉螺子製作所」の頃から会社の中心に立ち、『舞いあがれ!』の世界に顔を見せるのが当たり前になっていた彼は、いつも、いつまでもいるものと思っていた。しかし、そうではなかった。仕事に対する情熱も大切だが、大不況の中で章は、家族を養っていかなければならない。そういったこともあり、彼の転職(=ドラマからの退場)は何も不思議ではなかった。

 番組公式サイトの人物紹介欄を開くと、「結城章」の名は“東大阪の人々”の項の“物語を彩る人々”内にあり、紹介文は「ねじ工場の職人。ベテランである笠巻の一番弟子で、後々工場が大きくなるのに比例するように、高い技術力をもつ職人に成長する」と記されている。(※)数々のシーンにおける葵の、ハツラツとした声と笑顔が思い出される。たしかに章は放送の開始当初からあくまでも“物語を彩る人々”のうちの一人だった。だからこそ、ここまで存在感を放つダークホース(=重要人物)であることなど、誰も予想していなかっただろう。けれども突然の浩太の不幸によって、彼のカムバックは必然的なものとなった。それも、父の遺志を継いだ舞が初めて勝ち取ってきた仕事である。彼女が成長したように、「岩倉螺子製作所」が「IWAKURA」へと変身を遂げたように、私たちが気づかぬうちに章も成長していたのだ。

 “葵揚=結城章”はただの“いつもいるアンちゃん”などではない。ずっといたからこそ得られた安心感と安定感が強みの、頼れる俳優/キャラクターに現在ではなっているのだ。これは脚本の妙なのだろうが、第一線に立ち続ける「歩」の駒は、いずれ「と(金)」になるもの。これまでは控えめな演技に徹していた葵が、今後どれくらい前に出てくるのか気になるところである。

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