『舞いあがれ!』舞は“キャラ変”ではない? 自分の知らない世界と向き合うための変化

『舞いあがれ!』舞は“キャラ変”ではない?

 “朝ドラ”ことNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の第8週「いざ、航空学校へ!」は新章突入、舞(福原遥)が航空学校に入学、宮崎で学び始める。

 学校とはいえ、大学時代のモラトリアム感は一切なくなり、プロフェッショナルとしての技能と知識を獲得するための専門の学校なので、真剣度が違う。試験に受からないとこの先のフライト課程に進めない。舞のチームメイトのメンバー6人だけとっても25歳から20歳(舞)まで幅広く、妻子のいる者、元商社勤務の者など様々なバックボーンを持っている。それまでそれなりにキビキビと聡明で思慮深くやってきた舞が、彼らのなかでは妹キャラのようになって何かとあたふたしてしまう。

 視聴者的にはこれが戸惑いポイントではあった。要因としてまず思い浮かぶのは、脚本家が桑原亮子から嶋田うれ葉に代わり、作家の個性の違いによってテイストが変わったのではないかということだ。

 制作統括の熊野律時チーフプロデューサーは以前からドラマ全体の世界観は桑原が作ったものをベースにしていると語っている。作家に個々の持ち味があるとはいえ、その人の個性全開にはならないということである。アニメで言うと作画監督は各回違ってもキャラ設定は変わらないというようなことであろうか。

 ところが、第8週はキャラ設定すら違って見えたところもあった。アニメで言うと、『彼氏彼女の事情』の作画監督の平松禎史がしっとり系、今石洋之はギャグ系で、同じ物語にもかかわらずまったく雰囲気が違うというトライを庵野秀明監督がやってみたというようなものだろうか。『彼氏彼女の事情』が古すぎてわからないとしたら、『エヴァンゲリオン』の新劇場版『破』で登場人物たちがお弁当を食べるシーンで綾波が「ポカポカする」とつぶやき、「綾波がそんなセリフを……!」と長らくエヴァを観ていたファンが驚いたというようなことであろうか。アニメに例えるのもなんですが。

 話を戻そう。ルームメイトの倫子(山崎紘菜)が夜な夜な化粧してどこかに出かけていくことが気になった舞は後をつけ、倫子の入っていった部屋のドアに聞き耳を立てる。ちょうど通りかかった吉田(醍醐虎汰朗)とやりとりしているとドアが開いて舞はそのドアにぶつかってしまう。というようなドタバタした描写に、舞はこんなキャラではないのではないかとネットで声があがっていた。確かにそんな気もするが、大学時代、はじめてなにわバードマンの部室に見学に来たとき、うっかり作りかけの羽根に手を触れそうになって叱られたこともあるので、思い込んだら後先考えずに突き進む性格ではあると思う。20歳になって大学でも仲間たちとわいわいやった経験も手伝って、少し積極的になったとしてもおかしくはないだろう。ただ慎重さが薄れた分、失敗もしてしまうのでは。

 生きてきた世界が違い、独立独歩な人たちと仲間としてやっていくために舞は舞なりにクリスマスパーティーを企画し、三角帽子をかぶってお好み焼きを作る。健気さは変わっていないのだ。

 ここがヘンという意見を言うのも自由だし、ヘンと思ったら触れずにいいところだけ観ることも自由である。このレビューではできるだけ、疑問もあるが、こうも考えられないだろうかと角度を変えて観ることを方針としたい。そこで思ったのは、人間は環境が変わると言動も変わるということだ。

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