『サムバディ』は全く共感できないドラマ? カン・へリムの怪演に身震いが止まらない

『サムバディ』は全く共感できないドラマ

 11月18日から配信中のNetflixオリジナル韓国ドラマ『サムバディ』。アスペルガー症候群で天才的なプログラマー、キム・ソム(カン・ヘリム)と建築デザイナーのソン・ユノ(キム・ヨングァン)はソムが開発したマッチングアプリ「サムバディ」を通じて知り合い、不思議なシンパシーを感じ惹かれ合っていく。

 そこにソムの長年の友人で警察官のギウン(キム・スヨン)とギウンの友人で祈祷師のモグォン(キム・ヨンジ)が絡み、悲劇的な結末へと向かっていくのだった……。(以下、ネタバレあり)

共感性ゼロ? でも展開が気になる不思議なドラマ

 最初に述べたいのは、本作には多くの性描写と暴力シーンが登場するということ。筆者もさまざまなドラマや映画を観てきたが、ここまでエログロを前面に押し出している作品を久しぶりに観た。特に動物好きにはつらいシーンもある。

 そしてドラマや映画では、登場人物の考え方や行動に共感することで、物語に入り込んでいくことが多いが、少なくとも筆者にはそれがなかった。なぜなら登場する人たちの行動が突飛すぎるからだ。

 主人公のソムは、アスペルガー症候群で人の感情を読み取ることができない人物として描かれている。なぜソムをアスペルガー症候群と設定しなければならなかったのか、作者の意図がいまいち読み取れなかったが、それはこの際、横に置いておくしかない。

 ソムのことを案じる母親が、幼いソムに対し人の表情を絵に描いて懸命に「嬉しい」「楽しい」「悲しい」「恐怖」といった感情を教えていた。しかし、その時ソムは、「恐怖」を感じている人物の顔が紫色で描かれていることに疑問を抱く。

 すると幼いソムは、思いがけない行動を取る。なんと紐で母親の首を絞めて母の顔が紫色になるかどうかを試すのだ。幼い子どもが紐を手に「もう一度お母さんの首を絞めてもいい?」と笑いながら聞くところは背筋が凍った。そのまま大人になり、どんな感情を持っているのか読み取れない女性になったのがソムなのだ。

 そしてソムの長年の友人で警察官のギウンもなかなかぶっ飛んだキャラクターだ。

 大事故で半身不随となり、車椅子生活を余儀なくされたギウン。男性との出会いを求めてマッチングアプリ「サムバディ」を利用し、そこで出会った人物と山で会うことを約束する。その人物が建築デザイナーのユノなのだが、そもそも初対面の男性に会うために、車椅子の女性が山の中へ向かっていくことが理解できない。

 ……と、このように物語を見ていく中で「あるある!」と感じることが限りなくゼロに近いのだが、10歩ぐらい下がり俯瞰して観ていくと、知らず知らずのうちに展開が気になってしまう不思議なドラマでもある。

 その要因としてはいろいろ考えられる。物語を彩るクラシックをはじめとしたバラエティに富んだ音楽は「ここでこんな軽快な音楽を流すのか」という意外性があり、そのミスマッチがなかなか楽しい。

 そして「共感できない」ながらも、登場人物たちの演技力にひきつけられていく。ソムを演じるカン・ヘリムの虚ろな表情、ギウンを演じるキム・スヨンの目力、もしかしたら登場人物の中で一番まともかもしれない祈祷師のモグォンを演じるキム・ヨンジの妖艶な雰囲気。

 バラバラな個性を演じる3人の女性たちに引き込まれていくのは否定できない。

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