今が“旬”! マ・ドンソク、ファン・ジョンミンら、年齢を重ね魅力を増す韓国の名優たち

韓国の名ベテラン俳優たち

 年を重ねた俳優が醸し出す雰囲気が好きだ。若い頃より深まった演技。己の個性を研ぎ澄ませた存在感。その全てがうら若きころより魅力的に映る。そして個人的意見を述べると、年を重ねた俳優の幅が広い国はいい映画を撮る。その最たる例が韓国映画だろう。世界的評価が高まる韓国エンターテインメントとともに韓国の俳優の注目度が高まっている。

 実際、マ・ドンソクはオスカー監督クロエ・ジャオが手がけた『エターナルズ』(2021年)にメインキャストとして出演し、Netflix『イカゲーム』(2021年)で社会現象にもなったイ・ジョンジェは『スター・ウォーズ』シリーズの出演が内定している。というわけでワールドワイドに活躍する韓国のベテラン男性俳優たちをご紹介。なお、幅が広いため、本記事のセレクトは全て筆者の独断である。

マ・ドンソク

『犯罪都市 THE ROUNDUP』©ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION

 このリストを作製する時、まず意識したのがマ・ドンソクをどう扱うか、ということだ。なにせマ・ドンソクである。この記事テーマで、マ・ドンソクを紹介しないという手はない。その両肩にパンゲア大陸がのしかかったとしても崩れなさそうな肩幅。「マブリー」という愛称が象徴するようにラブリーな魅力が大爆発な顔立ち。今世界中を見渡してもこれほど「個性」を極めた俳優は中々いないだろう。そんなマ・ドンソクは「遅咲きのスター」である。マ・ドンソクがファーストブレイクを果たした作品が『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016年)で、この時既に45歳。まさに「マブリー」という個性を極めた果てのブレイクだと言える。

 そんなマ・ドンソクおすすめの作品は『ファイティン!』(2018年)。アームレスリングを題材にしたスポ根映画で、まさにマ・ドンソクに誂え向きの作品だ。しかし本質はマ・ドンソクのアイドル映画であり、マ・ドンソクがマブリーと言われ続けた結果生まれたような作品だ。とにかく肩幅の大きなマ・ドンソクが超絶キュート。「あざとい」という感想が40代のアクションスター主演の映画から出てくるとは思わなかった。マ・ドンソクという俳優の個性の中でもマブリー成分を特に味わいたい人におすすめ。また、現在公開中の最新作『犯罪都市 THE ROUNDUP』(2022年)はジャンルとしてのマ・ドンソクを創成しており、これまた必見だ。

イ・ジョンジェ

『イカゲーム』Netflixにて独占配信中

 イ・ジョンジェが『イカゲーム』のヒットによって世界的スターへとなっていくのを目撃した時、一抹の寂しさを覚えた。「なんてことだ。俺のイ・ジョンジェが」と。よく考えたら筆者のイ・ジョンジェではなかった。しかしそう思わせてしまう魅力がイ・ジョンジェにある。すらりとした体形から醸し出される上品な色香に、幅広い役柄を難なく演じる演技力。今思えば、むしろ世界的スターになるのが遅すぎたくらいである。

 『イルマーレ』(2001年)で儚く美しいイケメンを演じたと思えばNetflixオリジナル映画『サバハ』(2019年)では新興宗教の闇を暴くボンクラ神父を演じ、『イカゲーム』では親戚に一人はいそうなダメ人間を演じていた。『イルマーレ』でイ・ジョンジェに入った筆者としては、イ・ジョンジェに対して「なんか親戚にいそう」と思えるのは衝撃だった。

 そんなイ・ジョンジェのおすすめの作品は『新しき世界』(2013年)。韓国映画史に残るノワール映画の金字塔だ。イ・ジョンジェは情と職務の間に揺れ動く複雑なキャラクターを演じている。とにかく胸を搔きむしりたくなるほどの名作なので、是非観て欲しい。この映画を観れば、イ・ジョンジェが世界的スターとなったのは必然だと思える。

ファン・ジョンミン

『人質 韓国トップスター誘拐事件』©2021 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & FILMMAKERS R&K & SEM COMPANY. All Rights Reserved. HITOZITI-MOVIE.COM

 もし「今一番好きな韓国俳優をひとり選べ」という残酷きわまりない質問を投げかけられた場合、血反吐とともにファン・ジョンミンと答える。ファン・ジョンミンは最高だ。しかし彼にはマ・ドンソクのように太い二の腕も、イ・ジョンジェのように蠱惑するような色香もない。加えて言うとファン・ジョンミンが本人役を演じた映画『人質 韓国トップスター誘拐事件』(2022年)では、誘拐組織の犯罪者から「赤ら顔のブサイク野郎」とすら言われていた。ではファン・ジョンミンはそこまで人気のない素朴な俳優なのだろうか? もちろんそんなことはない。

 ファン・ジョンミン単独主演作『ベテラン』(2015年)は韓国歴代興行収入3位(当時)の大ヒットを記録した。また『新しき世界』や『国際市場で逢いましょう』(2014年)など名だたる映画に出演してはあらゆる演技賞を総なめにしている。まさに韓国で不動の人気を誇るドル箱スターだ。そんな彼の魅力は、「嘘をつく演技」にあると思う。噓を吐かせたらファン・ジョンミンの右に出る者はいない。『アシュラ』(2016年)のド外道市長パク・ソンベを演じた時は笑顔の裏で暴虐の限りを尽くし、『工作 黒金星と呼ばれた男』(2018年)では胡散臭い笑顔と共に北朝鮮に潜入する実在のスパイ黒金星を演じた。また、先程も紹介した『人質』はファン・ジョンミンが己の演技力で誘拐組織に対抗するという嘘つきの面目躍如な内容だ。

 そんなファン・ジョンミンのおすすめ作品はNetflix『ナルコの神』(2022年)。Netflixランキングでも連日トップ10入りを果たしたオリジナルドラマだ。この作品でファン・ジョンミンは麻薬大国スリナムで人々の信頼を集める笑顔の素敵な神父を演じている。もちろんただの神父なわけがなく、登場して10分くらいで素敵な笑顔と共に「神の御意志なんだよ、犬野郎」と中国マフィアを脅している。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる