『鎌倉殿の13人』小栗旬VS生田斗真の凄まじい演技合戦 全てを知った実朝の絶望も

『鎌倉殿の13人』全てを知った実朝の絶望

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第44回「審判の日」。後鳥羽上皇(尾上松也)の計らいにより、源実朝(柿澤勇人)は右大臣に叙されることとなった。政子(小池栄子)や実衣(宮澤エマ)たちが実朝の栄達を喜ぶ中、鎌倉殿への野心に燃える公暁(寛一郎)は三浦義村(山本耕史)のもとを訪れ、「明日、実朝を討つ」と練り上げた計画を語る。

 物語序盤で、義時(小栗旬)と源仲章(生田斗真)が対峙する場面があった。仲章は朝廷と鎌倉の橋渡し役として存在感を高め、義時の前に立ちはだかる。仲章は義時に、頼家(金子大地)とその子・一幡(相澤壮太)の死の真相を聞いたとかまをかけた。動じない義時だが、その目は苛立っている。義時が「そなたの目当てはなんだ」と問うと、仲章は自信ありげな顔つきで「望みはただの一点。人の上に立ちたい」と答える。仲章は義時の上に立ったような口ぶりだ。仲章が自信に満ちた表情を崩さぬまま義時にぐっと近づいて、「血で汚れた誰かより、よほどふさわしい」と口にしたとき、彼は恐ろしい目をしていた。

 これまで仲章は実朝や他の御家人たちを心の内で見下しながらも、その態度を表には出さず、鎌倉を揺るがす一連の出来事の黒幕でありながらも、それを暴かれることなく立ち回ってきた。そんな仲章が見せた圧するような目つきは、彼が明白に見せた義時への敵意。仲章が立ち去った後もその場には緊張が残った。義時はトウ(山本千尋)に仲章殺害を命じたが、失敗に終わる。拝賀式に現れた仲章は、おちょくるように義時の顔を見た。仲章の勝ち誇った顔つきはなかなか憎たらしい。

 義時対仲章も印象的だったが、第44回で最も心打たれるのは、兄・頼家の死の真相を知った実朝の表情だ。実朝は公暁が執拗に「鎌倉殿」にこだわるのか疑問を抱いた。兄の死に至る経緯を知るために、実朝が説明を迫ったのは誠実な御家人である三善康信(小林隆)だった。「私が問うておるのだ、善信!」と迫る姿には真実を知る覚悟が感じられる。真実を知った実朝は憤りを抑えながらも、「なぜ黙っていたのですか」と政子を問い詰める。

 実朝の横顔には、政子が真実を黙して語らなかったことへの憤りだけでなく、無念の死を遂げた頼家や自分に恨みを抱く公暁を慮るような深い悲しみも感じられた。公暁を出家させたのは「あの子を守るため」と言う政子に、実朝は穏やかな声色ながらも「いいえ」と否定し、「兄上が比企と近かったからです」と真正面から切り込む。「北条が生き延びるにはそうするしかなかった」という政子の言葉に、実朝は失望に満ちた表情を浮かべる。わずか12歳で三代目鎌倉殿を継いだ実朝は、自身の置かれていた境遇を思い知らされた。それでもなお、人を思いやる気持ちが強い実朝は、公暁の心の内を思って涙を浮かべる。実朝は涙ながらに政子に訴えた。

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