『クロサギ』氷柱に『ちむどんどん』暢子も 黒島結菜が演じるヒロインの共通点

『クロサギ』黒島結菜の強い意志に伴う“涙”

 価値観が多様化している時代。何をなすべきなのか、どうあるべきか。他人に流されず、自分の在り方を自分で選び取る力がこれまで以上に必要とされている。その力を備えた新時代のヒロイン像を確立しているのが、俳優の黒島結菜だ。

 黒島が出演中の金曜ドラマ『クロサギ』(TBS系)は、平野紫耀演じる主人公の黒崎高志郎が、“詐欺師を騙す詐欺師=クロサギ”となり、自身の家族を破滅させた本当の敵に迫っていく復讐劇だ。いわゆる黒崎はダークヒーローであり、“目には目を、歯には歯を”の必要悪を信じているわけである。

 たしかに、黒崎が人の弱みや純粋な心につけ込む詐欺師たちを片っ端から成敗し、結果的に善良な市民を助け出す展開はカタルシスを醸成する。だが、「罪を暴くために罪を犯していいのか?」「それは正義と言えるのか?」と、観る者に難題な問いを突きつけてくるのが黒島の演じるヒロイン・吉川氷柱だ。

 氷柱は検事になるのを目標に勉学に励む女子大生。ある日、彼女は自分の父親である辰樹(船越英一郎)が詐欺の被害者になってしまったことで黒崎に出会う。父親が騙し取られたお金を取り戻したい気持ちはあれど、詐欺師を詐欺で陥れる黒崎のやり方には納得がいかない氷柱。人一倍正義感が強い彼女は、ストーリー的には正直、都合が悪いキャラクターだ。黒崎の計画を阻止するから、こちらがスカッとしたいと思っていても興を削がれることがある。だけど、冷静になって考えてみるとどうだろう。途端に、氷柱は黒崎や私たちの無意識的な“正義の暴走”を止めてくれる重要な存在に思えてくる。

 黒島はこういう真っ直ぐで、真っ直ぐすぎて、観ている側が勝手にばつの悪い気分になってしまうような人物を演じることが多い。彼女の透明感あふれるビジュアルと凛とした佇まいがそうさせるのか。連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK総合)で演じた主人公の暢子もそうだ。暢子は氷柱よりも天真爛漫さが前面に押し出されたキャラクターではあるが、同じように周りの意見に流されない芯の強さを持っていた。

『ちむどんどん』の“船長”黒島結菜の未来を願う 最終回は勇気を届ける大団円に

半年間に渡って放送してきた朝ドラ『ちむどんどん』(NHK総合)が最終回を迎えた。  最終回の前日から、『あさイチ』(NHK総合…

 「まくとぅそーけーなんくるないさ(正しいと思うことをしていればなんとかなる)」という亡き父の教えを守り、自分の思う幸せを全力で追い求める暢子も協調性を重んじる立場からすれば都合が悪い。暢子の生き様は「あなたは本当はどう生きたいの?」と問いかけてくるようで、思わず目を伏せたくなるから。一方で、暢子にも全く迷いや揺らぎがないかといったらそうではなく、周囲との対立によってそれまでの生き方が覆されることもある。その際の苦悩や葛藤を、黒島はシリアスになりすぎず、かといってコミカルにもなりすぎず、それらが同居した演技でもって映し出していた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる