林遣都はやっぱりすごい 『初恋の悪魔』鹿浜の性格を繊細に物語る所作

『初恋の悪魔』林遣都はやっぱりすごい

 林遣都はやっぱりすごい。最終回へと向かっていく『初恋の悪魔』(日本テレビ系)を観ていて、そう感じずにはいられない。

 本作は伏線回収とともに解けていく謎と、若き名優たちによる演技合戦が回を重ねるうちに注目を集めるようになった。“イントロ”の時点で離脱してしまった視聴者もいたようだが、ここ数話は“大サビ”の連続。離脱者に対するファンの「もったいない!」との声も目立つ。そんな作品の中心に存在しているのが、林遣都なのである。

 とある警察署に勤める若者たちの一風変わった関係を描いた本作は、“恋愛ドラマ”であり、“友情物語”であり、“ミステリー”だ。登場人物のちょっとした言動で、作品の手触りはガラリと変わる。放送が開始されたばかりの頃はこのあたりが曖昧で、“恋愛”もなく、“友情”もなく、率直に言ってしまえば地味な“ミステリー”の印象を受けた。しかし、ダブル主演の林と仲野太賀、松岡茉優、柄本佑らが扮する者たちを軸として、回を重ねるごとに本作は多様な表情を見せるようになってきた。どれかしらのジャンルの側面から見れば痛快な作品だが、それらが絡み合い、いまでは非常に複雑なものとなっている。

 林が演じているのは、停職処分が解けたばかりの刑事・鹿浜鈴之介。“推理マニアで凶悪犯罪に目がない”という変わり者で、物語の序盤では社会への適応能力の低い人物だった。だが、馬淵悠日(仲野太賀)、摘木星砂(松岡茉優)、小鳥琉夏(柄本佑)らとの交流により、友情が芽生え、恋心を知り、だんだんと変わっていった。安田顕演じる隣人・森園真澄を“怪しい人物”だとして観察していた彼だが、視聴者としては鹿浜のほうこそ「怪しい」と感じていたことだろう。小難しい言葉をまくし立てるように繰り出すセリフ回しだけでなく、林は身体の扱い方にもこだわっていたように思う。スポーツを題材とした作品で主演を務めたり、ド派手なアクションが売りの『HiGH&LOW』シリーズで主要人物を演じてきたほどの彼だが、今作では身体の柔軟性が乏しく、どことなくいつもこわばっている。特に他者と関わるときだ。アクティブではない鹿浜の性格を、林の所作は繊細に物語っている。

 “林遣都はやっぱりすごい”と冒頭に記したが、それは彼が「怪演」とも呼べるものを器用にこなしているからだけではない。本作で示している、キャラクターの微妙な変化に関してである。

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