なぜお笑い芸人を描く作品が増えた? 取り巻く環境の変化と“ドラマな人生”の面白さ

 いつの間にか、お笑い芸人のドラマが増えている。

Netflix『浅草キッド』

 お笑い芸人が出演するドラマではない。お笑い芸人を題材としたドラマが数多く作られているのだ。ドラマ好きにとって真っ先に浮かぶのは『コントが始まる』(2021年/日本テレビ系)だろうか。菅田将暉、神木隆之介、仲野太賀が演じる主人公3人は売れない芸人で、トリオとして小さな劇場でコントをしている。毎話、一つのコントがオープニングで披露され、そのコントの内容がドラマ自体とリンクする構成が見事で、各話の最後にコントのオチとドラマのオチが重なり感動を生む。有村架純、古川琴音、芳根京子など旬の若手俳優との豪華共演でも話題となった。本作で描かれるお笑い芸人は実在の人物ではないが、観ているお笑いファンは、いくつもの実在のコントトリオを重ねたことだろう。

 『コントが始まる』のほかにも、お笑い芸人を題材としたドラマは、数多くある。古くは、朝ドラ『心はいつもラムネ色』(1984年/NHK総合)でも、戦後の大阪を舞台に、漫才コンビのためにネタを書く作家を主人公としたドラマが描かれたそうだ。同じ朝ドラの『ちりとてちん』(2007年/NHK総合)の主人公は落語家だったが、今の時代に改めてお笑い芸人をモデルとした朝ドラが作られても良いかもしれない。

 最近の流れのきっかけになったのは、ピース又吉直樹原作の『火花』(2016年/Netflix)だろう。芸人である又吉自身が描いた小説を原作にしたドラマの中では、売れない芸人の先輩後輩関係が描かれる。林遣都が演じる後輩が売れていき、波岡一喜が演じる先輩の芸風がその影響で変化していく残酷さに、きっと現役で芸人をしている人の多くの人は心当たりがあっただろうし、視聴者としても、そこで描かれたのが現実であるかのように錯覚し、胸を打たれた。ちなみに、廣木隆一、白石和彌、沖田修一という錚々たる映画監督が演出を担当している。

 正確にはドラマではなくモキュメンタリーであるが、『MASKMEN』(2018年/テレビ東京系)という珍作も存在した。俳優の斎藤工が野性爆弾くっきープロデュースの下、覆面芸人としてのデビューを目指す様が映されていたが、バイきんぐ小峠英二、NON STYLE 石田明、永野らとの会話を通じて、フィクションとは限らない芸人のリアルを垣間見ることができた。

 『べしゃり暮らし』(2019年/テレビ朝日系)は、森田まさのりによるマンガが原作。間宮祥太朗と渡辺大知が演じる高校生漫才コンビが、プロのお笑い芸人を目指していく中での先輩芸人や構成作家などとの交流が描かれた。芸人同士で、互いに影響を与え合う人間関係の面白さもさることながら、劇団ひとりが演出を務めたこともあり、漫才シーンをネタの最初から最後まで放送し、実際に笑えたということでも話題となった。

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