前田公輝、『ちむどんどん』は『ハイロー』に次ぐ転機 完全無欠になりきれない人間らしさ

前田公輝、『ちむどんどん』は第2の転機に?

 最終回が迫る連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK総合)。それに伴い、黒島結菜、宮沢氷魚、井之脇海ら出演者が続々と『あさイチ』(NHK総合)に登場している。9月20日に出演するのは、暢子ら四兄妹の幼なじみ・智役の前田公輝だ。

 現在31歳にして、芸歴は25年目となる前田。2003年から2006年にかけてNHK教育の『天才てれびくん MAX』でてれび戦士を務めていた頃、くしゃっとした笑顔でお茶の間を元気づけていた彼が、今はその笑顔一つで人間のおかしみを表現する名役者となっている。

 10代後半から20代前半の前田は、『ごくせん』第3シリーズ(日本テレビ系)や『花ざかりの君たちへ〜イケメン☆パラダイス〜2011』(フジテレビ系)、『アルジャーノンに花束を』(TBS系)など、各時代を象徴するドラマに出演。可愛らしさも残したやんちゃな男の子を演じることが多かったが、ふとした瞬間に見せる威圧的な表情が印象深かった。

『HiGH&LOW THE WORST』の“裏主人公”=轟洋介 人望なき男が仲間を手に入れるまで

鬼邪高校は、SWORD地区の中でも独特のシステムを持った集団である。普通ならばトップは1人だが、鬼邪高は全日と定時に分かれており…

 そんな前田の転機となった作品が、2015年10月期のドラマから始まった『HiGH&LOW』(日本テレビ系)シリーズだ。同作はEXILE HIROが企画・プロデュースを務めるEXILE TRIBEのメディアミックスプロジェクト。さまざまなチームが割拠するSWORD地区での抗争を描いており、ここでも前田は好戦的な若者を演じている。

 しかし、それまでと違うのは見た目。前田が演じる鬼邪高の全日制の生徒・轟洋介は学ランと眼鏡がよく似合う色白の青年で、男くさい世界観の中では特別異彩を放っている。だが、その強さもまた格別で、インテリ風の出で立ちとのギャップに心を奪われる人が続出した。

 同作ではそんな轟が鬼邪高の番長・村山良樹(山田裕貴)との出会いをきっかけに、「トップに立つべき人間としての資質」に向き合っていく姿も描かれている。特に印象に残っているのは、『HiGH&LOW THE WORST EPISODE.O』(日本テレビ系)第2話のラストで見せた笑顔だ。

『HiGH&LOW THE WORST X』©2022「HiGH&LOW THE WORST X」製作委員会©髙橋ヒロシ(秋田書店) HI-AX

 轟が当初浮かべていた笑顔には、自分の力を誇示することにしか興味がない彼の空虚さがよく現れていた。しかし、全日制の派遣争いで自分につくことを決意してくれた辻(鈴木昴秀)と芝マン(龍)に向ける笑顔にその空虚さはまるでない。ちょっと戸惑ったような、呆れたようにも見える笑顔に初めて彼の人間味を感じることができた。

 『探偵が早すぎる』(読売テレビ・日本テレビ系)で演じた貴人役も忘れがたい。貴人はヒロイン・一華(広瀬アリス)の命を狙う大陀羅一族の人間。人の命を何とも思わないサイコパスで、一華を感電死させようとするが、犯罪を未然に防ぐ探偵・千曲川(滝藤賢一)に阻止されてしまう。返り討ちにあってもなお、笑い狂いながら反撃を企てる姿にゾクッとさせられたが、そこには自身も大切な存在を身勝手に奪われ、狂人にならざるを得なかった貴人の哀しみもあった。

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