『3つの鍵』と『靴ひものロンド』をハシゴしよう イタリアの巨匠が描く“家”の崩壊と解放

『3つの鍵』と『靴ひものロンド』の共通点

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週はオートロックに憧れる花沢が『3つの鍵』をプッシュします。

『3つの鍵』

 3つの鍵、と訳された本作の原題は『Tre piani』。イタリア語で「3階建て」という意味です。本作はそんな3階建てのアパートを舞台に、各階に住む家族の人間模様が描かれます。

 この映画の主役ともいえるアパートは、イタリア・ローマの高級住宅地に位置するだけあって、ベッドルームのほかに、広々としたテラスや書斎まである豪華な間取りです。ところが、劇中では常に窮屈そうに見えます。

 それもそのはず。映画の冒頭に起きたある交通事故をきっかけに、このアパート全体に暗雲が立ち込めていくからです。

 事故を起こした当事者は3階に住む家族の一人息子。飲酒運転をした上に女性を轢いてしまい、自宅であるアパートに猛スピードで追突します。そして、この車が突っ込んだ先が1階にある、幼い娘のいる夫婦の部屋。室内が滅茶苦茶になったことから、彼らは娘を向かいの老夫婦に預けますが、そこでお爺さんが娘に対してあいさつのキスを執拗にせがんだことから、娘の父親は彼が児童性愛者なのではと疑いを持つようになります。

 たった一夜の出来事が、平和なようで実は危ういバランスで保たれていたアパート内の人間関係を揺るがし、その揺らぎはやがてドミノのように崩壊を連鎖させます。同じコミュニティに暮らす人間の中に「加害者」と「被害者」の構図が複雑に生じることで、このアパートは誰にとっても息苦しい牢獄になっていくのです。

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