『デパプリ』が描く“ごはん”で繋がる多様な価値観 シリーズの魅力を総まとめ

『デパプリ』が描く多様な価値観

 いま、『デリシャスパーティ♡プリキュア』(略称『デパプリ』/テレビ朝日系)がおもしろい。放送開始以降、ずっと堅実なドラマを積み重ねてきた作品だったが、いわゆる”追加戦士”として4人目のプリキュアとなったキュアフィナーレが登場してから、さらに目が離せなくなってきている。

 本稿では9月23日公開の映画『映画デリシャスパーティ♡プリキュア 夢みる♡お子さまランチ!』に向けて、さらなる盛り上がりを見せている本作の魅力を総まとめでご紹介する。

 本作は『プリキュア』シリーズで初めて、最新作の時点で見放題配信サービスでの全エピソードの視聴が可能になった作品でもある。少しでも気になったら、Amazon Prime VideoやNetflixなどの配信サービスでチェックしてみてほしい。

ごはん・食卓を起点に、現代に生きる女の子たちの多様さに寄り添う

 『デリシャスパーティ♡プリキュア』は『プリキュア』シリーズの19作目にあたる。近年は「子育て」や「宇宙」など、作品ごとになんらかのテーマ・モチーフが設けられている『プリキュア』シリーズだが、本作のモチーフは「ごはん」。

 主人公の和実ゆい/キュアプレシャスとその仲間たちは、世界中の美味しい料理を振る舞う飲食店が立ち並ぶ街“おいしーなタウン”に住んでおり、敵である“ブンドル団”から街中の“おいしい笑顔”を守るため、戦いを繰り広げる。

「デリシャスパーティ♡プリキュア」オープニング主題歌「Cheers!デリシャスパーティ♡プリキュア」(ノンテロップver)

 新型コロナウイルス感染症によって飲食店に対して度重なる営業自粛要請が行われてきた昨今において、飲食店が提供する“おいしいごはん”、これがもたらす“笑顔”を守るプリキュアを描いたのは、決して偶然ではないだろう。プリキュアはこれまでも、誰かにとっての大切なもの、大切な場所を守ってきたからだ。

 ゆいたち自身が料理をするシーンも多く、料理の前には手を洗うカットが入ることを徹底しているなど、本作が切っ掛けで料理に興味・関心を持つような子どもに向けた描写の数々も丁寧だ。

 ゆいは本作のテーマである“ごはんは笑顔”を体現する、強くて優しくて、ごはんが大好きという、ある意味で完全無欠な主人公気質の女の子と言える。一方、序盤でゆいと友達になり、一緒にプリキュアとして戦っていく芙羽ここね/キュアスパイシーと、華満らん/キュアヤムヤムは、ごはんが好きというゆいとの共通点はあれど、もう少し現代的なテーマを背負うキャラクターとして描かれる。

 ここねは高級レストランを営む家の子どもで、両親が多忙で家を留守にしがちなため、家族で食卓を囲むことがほとんどなかった。学校でも打ち解けられる友達ができなかった中で、ゆいやらんと出会い、大切な人と一緒にご飯を食べる楽しさを知る。直近では、互いに距離感がうまく掴めていない両親との歩み寄りを描いたエピソードも放送された。

 らんは飲食店で食べた料理を匿名でSNSに投稿する趣味を持っているが、これをブンドル団に利用されてしまうエピソードがあった。これには子どもたちに向けた、SNSを利用する上でのプライバシーに関する配慮を促す意味合いもあっただろう。

 モチーフである「ごはん」や食卓を起点としつつ、現代に生きる女の子たちの多様さに寄り添い、日々の生活の中で体験する出来事への気付きや、他者への思いやりを促す作劇が丁寧に行われているのが、『デリシャスパーティ♡プリキュア』が描くドラマの根幹にある魅力と言えるだろう。

 プリキュアのパートナーとなる動物の姿をした“エナジー妖精”、コメコメ・パムパム・メンメンたちの可愛らしさや、ゆいたちとの微笑ましいやりとりもまた、作品の空気感に温かな彩りを添えてくれている。

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