『鎌倉殿の13人』柿澤勇人、実朝のにじみ出る気品と優しさ 菊地凛子は物語をかき回す予感

『鎌倉殿』柿澤勇人&菊地凛子が新風を吹かす

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第34回「理想の結婚」。源実朝(柿澤勇人)と後鳥羽上皇(尾上松也)のいとことの婚姻が決まった。そんな中、北条時政(坂東彌十郎)から代々受け継ぐ惣検校職のお役目を返上するように求められた畠山重忠(中川大志)が疑念を抱き、義時(小栗旬)に相談する。京と鎌倉でさまざまな思惑が渦巻く中、義時にも縁談が持ち上がる。

 第34回では、三代鎌倉殿・源実朝を演じている柿澤が見せる感情の機微、そして義時にとって理想の女性に映るのえ(菊地凛子)に注目する。

 政治の表舞台に立つことになった実朝は、不安げな面持ちで宿老の声に耳を傾ける。柿澤の演技は、実朝の鎌倉殿の務めを果たそうとする意志と鎌倉殿が務まるだろうかという不安が同時に感じられるのが魅力的だ。宿老たちの前に現れた実朝からは、父・頼朝(大泉洋)や兄・頼家(金子大地)に似た凛とした佇まいが感じられたし、八田知家(市原隼人)らとの稽古では少々おぼつかないものの懸命に取り組んでおり、鎌倉殿であろうとする志が感じられた。一方で、どこか心もとない眼差しや少しかたい表情、自信なさげな言い回しからは彼自身の戸惑いや緊張が感じられる。

 頼家とは対照的に、実朝は控えめな人物だ。泰時(坂口健太郎)が「あのお方は、あまりご自分のお気持ちを語られないので」と言っていたように、実朝は自身の感情を言葉ではなく表情で浮かべることが多い。泰時から「ご結婚の件、おめでとうございます」と言われたとき、実朝は返事をする代わりに少しだけ微笑んだが、その後は浮かない面持ちのままだった。鎌倉殿として学ぶべきことに追われる実朝にとって、婚姻は実感がわかないうえ荷が重いのかもしれない。

 そんな実朝だが、和田義盛(横田栄司)の館で義盛と巴御前(秋元才加)のやりとりを見ていたときにふっと優しい笑みをこぼした。とても優しい表情だった。元来、実朝は思いやりがあり、穏やかで優しい人物なのだろう。自然体で過ごすことができたからか、実朝は義時に婚姻を取りやめにしたいという正直な気持ちをそれとなく伝えていた。義時に聞き返されたときには「いや、いい」と濁していたが。

 物語終盤では、実朝は政子(小池栄子)が書き写した和歌に夢中になる。和歌に釘付けになる実朝の目はこれまでになくいきいきとしていた。和歌は実朝が本当に夢中になれるものだということが伝わってくる。和歌を教えていたのが源仲章(生田斗真)なだけに、真面目な実朝が京と鎌倉のいざこざに巻き込まれる不安は高まるが、実朝が和歌を通じて成長するのではないかと期待が高まる。

 次に紹介したいのがのえだ。二階堂行政(野仲イサオ)の孫であるのえとの縁談は、行政と大江広元(栗原英雄)が持ちかけた。初めは乗り気でなかった義時だが、おしとやかなのえの言動が心を射止めたようで、照れ笑いを浮かべる。泰時に「おなごというものはな、キノコが大好きなんだ」と教え込んでいた義時は、性懲りもなくのえにもきのこを贈る。するとのえは「きのこ、大好きなんです!」と満面の笑みで受け取った。きのこが好きで、子どもたちともすぐ打ち解けるのえは、知家や弟の時房(瀬戸康史)から見ても好印象の女性だった。それに、義時と2人きりで話すのえの佇まいは、どことなく八重(新垣結衣)に似ていた。のえを演じる菊地の目線の合わせ方や台詞の言い回し、義時の話に耳を傾ける姿勢から八重の雰囲気が感じられる。

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