新田真剣佑、なぜ“ラスボス”に? 『ハガレン』『るろ剣』で見せるキャラクターの深み

新田真剣佑、なぜ“ラスボス”に?

 顔に“十字傷”のある者を探していた男が、今度は自らの顔に“十字傷”をつけてスクリーンに帰ってきたーー。

 そう、『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー』に出演の俳優・新田真剣佑のことである。1年前に公開された『るろうに剣心 最終章 The Final』で雪代縁役として、仇である十字傷の男・緋村剣心(佐藤健)を追い詰めた彼が、現在は鋼の錬金術師のエドワード・エルリック(山田涼介)を追い詰めているところなのだ。新田とは、“ラスボス”の役を見事に体現してみせる俳優である。

 『復讐者スカー』で新田が演じているのは、タイトルロールであるスカーという男。とはいえ「スカー」は本名ではなく、額に大きな十字傷(スカー)があるために周囲がこう呼んでいるだけだ。タイトルに「復讐者」とあるように、彼の行動原理は強烈な復讐心のみ。主人公のエドたちが生まれ育ったアメストリスの軍部に殲滅されたイシュヴァールの民の生き残りであり、この大戦で戦果を上げた国家錬金術師らの命を狙っているというわけだ。さすがは新田真剣佑。マンガを原作としたこれまでの出演作と同様に本作でも見事な肉体づくりはもちろんのこと、作品世界に没入し、徹底してスカーというキャラクターのリアリティを追求しているように思う。彼の存在こそが私たちを物語の世界へと引きずり込むのだ。

 2017年に初めて『鋼の錬金術師』が実写化された際、さまざまな厳しい意見が飛び交ったことを鮮明に覚えている。原作ファンやアクション映画ファンのこだわりは強く、出演している俳優たちのファン、この手のCGを多用した映画のファンなどはまた違う視点を持ち、それらを愛していればいるほど見方は厳しくなって当然だ。しかし何より難しいのは、西洋人らしきキャラクターたちを日本の俳優が演じていること。そうなるとやはりどうしてもコスプレ感が生じてしまうわけだが仕方がない。例えばこれが舞台だったとすれば、いわゆる2.5次元作品の一つとして、演者と観客は積極的にこの“嘘”をともに楽しむことができるだろう。しかし実景が登場する映画だと多くの場合、この“嘘”はネガティブな要因にしかならない。いかに真実らしい作品に仕立てられるか、これがカギだ。そのために演じる俳優たちは全力である。観客にできることは信じることだけだ。

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