西野七瀬の役者としての飛躍を見た『恋は光』 神尾楓珠、馬場ふみか、平祐奈の演技が光る

西野七瀬の役者としての飛躍を見た『恋は光』

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、毎週水曜の乃木坂46と佐久間宣行のオールナイトニッポンを楽しみに生きている間瀬が『恋は光』をプッシュします。

『恋は光』

 まず最初に本作について感じた結論を述べておくと、役者たちの魅力が存分にあふれた非常にウェルメイドな作品、ということです。出演する神尾楓珠、西野七瀬、馬場ふみか、平祐奈らの演技がとても優れていて、小林啓一監督がこだわったであろうキャラクター像をそれぞれが見事に演じていました。

 その上で、本作を観た時、何においても俳優としての西野の飛躍ぶりについて触れずにはいられないと感じました。本作における西野の演技とその魅力を説明するにあたって、思い切ってアイドル時代のエピソードを1つだけ引っ張り出します。

 乃木坂46の結成は2011年、西野は1期生として1stシングル「ぐるぐるカーテン」でデビュー。その時点では西野は引っ込み思案で、バラエティ番組でも泣いている姿をよく見せていましたが、8枚目のシングルでセンターに抜擢され、企画でマカオタワーのバンジージャンプを飛ぶことに。のちに、西野自身が「このバンジーが転機だった」と語るほどに、その後は一変して吹っ切れた姿を番組で見せるようになり、アイドルとしての人気が一気に高まっていきました。ファンにとっては有名なエピソードですが、西野自身の魅力は「大舞台を経験するたびに、脱皮を繰り返すように成長を見せる」ところにあるのではないか、と考えています(このバンジーがその1回目)。

 その後も、映画『あさひなぐ』(2017年)や、ドラマ『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018 -』(テレビ東京系)に出演、アイドル活動以外でも演技経験を重ね、2018年末に乃木坂を卒業。その後すぐ2019年4月から2クール連続で放送されたドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)の黒島沙和役で怪演を見せ、彼女は1人の俳優としても一躍脚光を浴びます。ここでファンは、再び西野の大きな転機を目撃することになりました。

 その後もドラマ、映画への出演を重ねて迎えた本作では、“恋する女性が光って視える”特異な体質を持つ大学生・西条(神尾楓珠)に、ずっと片想いをしている幼なじみの北代役を演じています。ただし、北代のキャラクター自体はそこまで目立った特徴があるわけではなく、過去に演じた『あなたの番です』の黒島役や、映画『孤狼の血 LEVEL2』(2021年)のスタンドのママ・近田役などと比べれば、特徴に乏しいキャラクターと言っていいかもしれません。演技力が十分になければ役者そのものが前面に出てしまうような役でしたが、西野は北代という1人の大学生を見事に演じていました。

 特に細かな表情と仕草の演じ分け、揺れ動く心を表すセリフの間の取り方などが光っていましたが、そういった全てが、俳優としてのステップがまた1つ上がったということを証明しているようで、もはや「アイドル出身の」という枕詞は俳優としての西野を評価する際には完全に不要になっていると感じました。こういった歴史を踏まえて本作を観ると、アイドル時代のファンでなくとも、俳優としての彼女の今後に注目してしまうことでしょう。

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