国内外の映画や朝ドラなど多数の作品に出演 阿部純子が語る、これまでの歩みと今後の挑戦

阿部純子が語る、これまでの歩みと今後の挑戦

 2010年に映画『リアル鬼ごっこ2』で俳優デビューを飾り、10年強。国内外の作品に多数出演してきた阿部純子。

 映画『2つ目の窓』や『孤狼の血』、『ソローキンの見た桜』『罪の声』『燃えよ剣』、さらにNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』や『おちょやん』等々……。そして公開中の映画『リング・ワンダリング』では、笠松将演じる青年と出会うミステリアスな女性を、神秘性をたたえて演じている。

 リアルサウンド映画部では、阿部のこれまでの歩みを振り返るインタビューを実施。新作『Miss Osaka(原題)』では英語劇に挑戦し、ネパールで撮影した『バグマティ リバー』で第17回大阪アジアン映画祭芳泉短編賞スペシャル・メンションに輝いた彼女が語る過去と現在、そして未来。成長し続ける阿部純子の“声”に、耳を傾けていただきたい。(SYO)

1年間の留学後に訪れた心持ちの変化

――2022年は『リング・ワンダリング』ほか、映画2作品が公開予定。これまでの歩みを振り返って、いかがですか?

阿部純子(以下、阿部):10代から役者業を続けさせていただいているのですが、当初は「こうなりたい」「こういうふうにしないと周りの人の応援や支えに応えられない」と思って頑張りすぎてしまっていたときもありました。いまは自分もそうですし、周りの方がちゃんと理解してくださっている実感や信頼があるので、目の前のお仕事を一つひとつやっていくことが大事だと思っています。自分自身、「こういう作品に出させていただけるなんて思っていなかった」ということも多いですし、一つひとつ積み重ねて、それを観てくださっている方がいて、いつの間にかここにいさせてもらった、という感覚です。

――阿部さんは2014年公開の河瀬直美監督作『2つ目の窓』に出演されたのち、ニューヨークに1年間留学されていますよね。その中で心持ちに変化が訪れたのでしょうか。

阿部:むしろ帰ってきてからのほうが変化はあったかもしれません。留学中は「これをしたい」という目標に向けて頑張ったけどなかなか実力が追い付かない、といったことをたくさん経験していっぱいいっぱいでした。ですが帰ってきてから、周りの方のお芝居や作品で「すごいな。私もできるようになりたいな」と思える出会いも数多くあったと気づいたんです。そこから「自分が“これがいい”と思う以外のところに、もしかして何か大切なものがあるかもしれない」と思えるようになり、こだわりすぎて視野を狭めずに頑張ることが大事という感覚になっていきました。

『MISS OSAKA(原題)』(c)Haslund Dencik Entertainment

――これまでの出演作品で海外の方とのコラボレーションも多かったかと思いますし、『Miss Osaka』では全編英語のセリフに挑戦したと伺いました。様々な価値観に触れてきた役者人生だったのではないでしょうか。

阿部:『Miss Osaka』でいうと、主演のビクトリア・カルメン・ソンネさんはデンマーク国立演劇学校の卒業生なのですが、3人くらいしか入れない超名門校なんです。国が全額支援する演劇学校でトップだった方は、現場でもすごかったです。一緒にお芝居をやっていても毎回セリフが違いますし、そこにどう返答するか……私がNGを出せないので、緊張の連続でした。「今日はこのシーンの気分じゃない」と言って撮影しない日もありましたし、「衣装のイメージが違うから、監督と買いに行く」というときもありました。日本の感覚だと驚きの連続なのですが、スタッフさんも誰一人嫌な顔をせずに「これが普通」という感覚で動いていらっしゃって。そういったデンマークの素敵な方々の現場を経験したことで「絶対こうじゃないといけない表現の仕方や現場なんてないんだ」と学べました。『リング・ワンダリング』も『燃えよ剣』も、現場現場で「これが普通」は違うんですよね。毎回それに触れて、一緒にお仕事をさせていただいています。

――『Daughters』だったら撮影期間を3回に分けたり、作品ごとに様々なアプローチがありますもんね。そこに対応するためにも、フラットで臨むというか。

阿部:そうですね。もちろん、先ほどお話ししたように毎回カルチャーショックを受けることがあります。『Miss Osaka』だと、クランクアップのときにみんながグラスを持って挨拶を始めるんです。みんな熱い思いを語るから、なかなか飲めなくて(笑)。でもそれが仲間との距離が近いデンマークだったり、その現場の普通なんですよね。それを自然と受け入れられるようになったのは、留学経験が一つのきっかけといえるかもしれません。

――国内でも、これまでに河瀬直美監督(『2つ目の窓』)や白石和彌監督(『孤狼の血』)、深田晃司監督(『海を駆ける』)といったそうそうたるクリエイターと組んできました。

阿部:白石監督は色々なキャストの方々のことをすごくよく見ていて、私に関しても、私自身のことを面白がってくれる雰囲気を感じていました。本当に愛情深い方だと思います。深田監督については、役の考え方についてアドバイスをいただきました。急にインドネシアに来た理由を明確にされていない女の子の役だったのですが、私が「もっともっと役について調べなきゃ、前後に何があったのか考えなきゃ」と思っていたら「そんなに考えこまなくて大丈夫」と言ってくださったんです。その際に深田さんがおっしゃった「理屈通りに動けないのが人間だから」という言葉は、すごく印象に残っていますね。私たち自身もそうですが、「これがあったからこういう性格になった/こういう行動を起こした」で測れないものだから。でもそれは、考えることを放棄するということではなく、考えて考えて考え抜いたからこそ行きつける境地だとも思うんです。『淵に立つ』でいうと、深田さんは「淵に立つまで役者さんは考えないといけない。普通に生きていたら考えなくていいことを考え続けるのが仕事だ」とも仰っていたので、考えるにも色々な“深さ”があるんだと教えてもらえました。

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