『呪術廻戦』一色となった年末興行 オープニング成績は『鬼滅』の58%

『呪術廻戦』一色となった年末興行

 先週末の動員ランキングは、『劇場版 呪術廻戦 0』が土日2日間で動員113万6000人、興収16億2200万円をあげて、大方の予想通りスタートダッシュをきった。初日から3日間の累計では動員190万8053人、興収26億9412万8150円。ちなみに同じ『週刊少年ジャンプ』連載を原作とする東宝配給のアニメーション作品としてしばしば比較される昨年公開の『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のオープニング3日間の数字は、その約1.7倍となる動員342万493人、興収46億2311万7450円。もちろん、『劇場版 呪術廻戦 0』が文句なしの大ヒットであることは疑いようのない事実だが、昨年の『鬼滅の刃』興行がいかに特異なものであったかがわかる。

 この1週間の映画興行で起こった重要な出来事としては、11月26日(金)に公開されたばかり、現在も劇場公開中で先週末の動員ランキングでも10位に入っている『ミラベルと魔法だらけの家』が、ちょうど4週後の12月24日(金)からディズニープラスで配信されたことだ。実は今年9月の段階で、本国のディズニーが劇場公開から配信までの「45日間ルール」を発表した時にも、『ミラベルと魔法だらけの家』はその「45日間ルール」から除外されていて、そのことについては本コラムでも触れていた(参考:Netflix『ケイト』の大ヒットが表す、「映画館で見たい作品」と「配信でもいい作品」の違い)。つまり、当初からディズニーは『ミラベルと魔法だらけの家』をディズニープラスのクリスマス・プロモーションに利用することを決めていたのだろう。

 しかし、いざ実際にクリスマスイブ当日の発表を経て、日本でも北米と同じように4週間後にディズニープラスで何の追加料金もなく見れてしまうというのは、なかなかのインパクトだった。『呪術廻戦』一色の映画興行にあって週が明けてから意外な健闘をみせているのが公開2週目、先週末の動員ランキングでは4位の『ボス・ベイビー ファミリー・ミッション』なのだが、冬休みに入った親子連れ客の需要においては『ミラベルと魔法だらけの家』が自分からリングを降りたことも追い風になっているのかもしれない。

 いずれにせよ、劇場サイドとしては『キングスマン:ファースト・エージェント』や『マトリックス レザレクションズ』(早くも大幅に上映回数が減らされている)の不発も折り込み済、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の公開を『呪術廻戦』がちょっとは落ち着くであろう正月明けまで延ばしたのも大正解、といったところなのかもしれない。昨年の『鬼滅の刃』現象に続いて、今年もメガヒット作に頼って数字だけはなんとかギリギリ帳尻を合わせて延命を図った日本の映画興行界。まあ、先週の本コラム(参考:国外は『スパイダーマン』、国内は『呪術廻戦』 本格的な一強多弱時代がやってきた)でも取り上げたように、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』一色の海外の興行界も現象としては同じだが。しかし、映画業界はこのツケをいつか、そんなに遠くない未来に払わされることになるに違いない。

■公開情報
『劇場版 呪術廻戦 0』
全国公開中
声の出演:緒方恵美、花澤香菜、小松未可子、内山昂輝、関智一、中村悠一、櫻井孝宏
原作:『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』芥見下々(集英社 ジャンプ コミックス刊)
制作:MAPPA
配給:東宝
(c)2021「劇場版 呪術廻戦 0」製作委員会 (c)芥見下々/集英社
公式サイト:jujutsukaisen-movie.jp
公式Twitter:@animejujutsu

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