上白石萌音×甲本雅裕の熱演光る 『カムカムエヴリバディ』絶望の淵から生まれた希望

『カムカム』絶望の淵から生まれた希望

 岡山大空襲から約1カ月半後、ラジオから終戦を告げる玉音放送が流れた。

 ひさ(鷲尾真知子)と小しず(西田尚美)の死を受け心身ともに病んだ金太(甲本雅裕)の思いを汲み取るように、とても静かに始まった『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第18話。焼け残った雉真の家屋で床に伏せる金太は、ラジオの放送を聞いて咽び泣く。戦争は終わったが、すでに失ったものはあまりにも大きい。

 気丈に振る舞う安子(上白石萌音)もまた、2人の死を現実のものとして受け入れられないでいた。金太の世話であくせく働く彼女の代わりには、美都里(YOU)がるいの面倒を見る。戦争が終わっても未だ消息が掴めていない稔(松村北斗)と勇(村上虹郎)。安子も美都里も先の見えない不安に押し潰されてしまわぬように、何かで気を紛らわせようと必死なのだ。

 久しぶりにラジオから流れる天気予報を聞いた、「こねんして少しずつ元の生活に戻りゃあええが」という千吉(段田安則)の願いが、少しずつコロナ禍が収束に向かいつつある今にも通ずる。「はい、ここから新しい日々が始まります!」と宣言されるわけもなく、遺された者たちは手探りで歩を進めなければならない。

 安子はひさと小しずの仏前に供えるため、ようやく手に入った小豆でおはぎをつくり始める。本物の砂糖はまだ入手できなかったが、 杵太郎(大和田伸也)から金太が受け継いだあんこのつくり方を安子は必死で真似た。

「食べる人の幸せそうな顔を思い浮かべえ。おいしゅうなれ、おいしゅうなれ、おいしゅうなれ。その気持ちが小豆に乗り移る」

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