IMAXはIMAX作品だけのものじゃない 『劇場版 SAO』にみる映画興行の未来

『劇場版 SAO』にみる映画興行の未来

 映画というのは不思議な「商品」で、製作費が何十倍かかっていようが、97分(『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』)と156分(『エターナルズ』)の違いがあろうが、同じスクリーンでかかる以上、同じ条件で競わなくてはいけない。よく映画の統一料金(これも日本の映画業界特有の慣習でしかないが)が書籍や音楽ソフトの再版制度と比較されることがあるが、書籍だって紙や印刷の質やページの数によって単価は全然違うし、音楽ソフトだって2枚組や特典によって単価は違う。それに比べれば、通常のスクリーンの何倍もの設備投資が必要なIMAXのようなスクリーンでの上映であっても数百円しか上乗せしない日本の映画興行は、随分と「お人好し」な商売をしていると言えるだろう。

 今後、『DUNE/デューン 砂の惑星』の成功(日本では苦戦中だが)や、同じく興行的には成功が見込まれている『エターナルズ』の結果を受けて、世界的にIMAXスクリーンの需要はますます増えていくだろう。また、国内では『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』のような戦略的に特殊スクリーンを利用する作品も増えていくに違いない。そうである以上、現在日本では都市部に偏っているIMAXスクリーンの全国的普及は急務と言えるわけだが、その後押しとして、観客もよりメリハリのある料金体系を受け入れていく必要があるのではないだろうか。

■公開情報
『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』
全国公開中
声の出演:松岡禎丞、戸松遥、水瀬いのり
原作・ストーリー原案:川原礫(『電撃文庫』刊)
原作イラスト・キャラクターデザイン原案:abec
監督:河野亜矢子
アクションディレクター・モンスターデザイン:甲斐泰之
キャラクターデザイン・総作画監督:戸谷賢都
サブキャラクターデザイン:秋月彩、石川智美、渡邊敬介
プロップデザイン:東島久志
美術監督:伊藤友沙
美術設定:平澤晃弘
色彩設計:中野尚美
撮影監督:大島由貴
CGディレクター:織田健吾、中島宏
2Dワークス:宮原洋平、関香織
編集:廣瀬清志
音楽:梶浦由記
音響監督:岩浪美和
音響効果:小山恭正
音響制作:ソニルード
プロデュース:EGG FIRM、ストレートエッジ
制作:A-1 Pictures
配給:アニプレックス
製作:SAO-P Project
(c)2020川原 礫/KADOKAWA/SAO-P Project
公式サイト:https://sao-p.net/
公式Twitter:https://twitter.com/sao_anime

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