『うきわ』余韻たっぷりの最終回に “友達以上、不倫未満”の麻衣子と二葉さんが選んだ道

『うきわ』麻衣子と二葉さんが選んだ道

 たっくんとついに向き合った麻衣子だが、「うちらって意外と似た者同士だったのかもしれんね。想い合っとったつもりが結局自分のことだけ」という彼女の鮮烈な一言がたっくんに届いたかどうかは非常に怪しい。浮気を咎められても謝罪せず、「気づいていたのに何で何も言わなかったの?」ととにかく彼は“自分のことを見ていてほしい! 愛してほしい!”の欲求が強すぎる。その間、麻衣子がどんなに苦しんでいたかにも想いを馳せられず、終始「俺は、俺は」とベクトルが常に自分だ。状況は同じなのに、あまりに二葉さんと聖さんの対峙場面と様子が違いすぎた。だってそもそもたっくんは福田さん(蓮佛美沙子)のことを“愛おしい”だなんて想っていなかっただろうから。

 かく言う麻衣子も二葉さんと出会って初めて「その人の幸せを考えるだけで自分も嬉しくなれる人」という存在を、感情を知ったのだろう。たとえ、その相手が自分でなくとも、相手が幸せに生きていてくれさえすれば嬉しい。その相手と一緒でなくとも、自分が幸せに生きることが相手の喜びに繋がる。自分が苦しみの中に溺れてしまいそうな時にすがる狭い狭い安全なスペースである“うきわ”は結局引っ張ってくれる人の方にしか向かえず、束の間の安心は与えてくれても、それが自由とは言えない。その人に手を離されてしまえば、波の流れに逆えずただ流されるしかない。

 人にはきっとどうしたって“うきわ”が必要な時期もあるが、いつまでもそれに頼り切ったまままではその“うきわ”が萎んでしまえば、また新たな“うきわ”を見つけるしか術がなく結局“うきわ”があるところにしか行けなくなってしまう。新しい代替が見つからなければ二葉さんが言うようにまた溺れてしまう。誰かに引っ張ってもらう“うきわ”でぷかぷか浮くのは一見楽なように見えて、きっとずっとずっと不自由で不安だ。

 そこから出て、自力で泳げるようになればもっと広々とした中で思いっきり息を吸って、自分の好きなペースで進めるし、もっとずっと遠くまで行ける。最初は怖いかもしれないし、荒波にも揉まれて消耗するかもしれないし、思うように動けないこともあるかもしれない。それでもきっと“自分らしく”はいられるし、“こんなはずじゃなかった……”なんてことにはならないだろう。

 本作はそんなことを教えてくれながらも、誰の“うきわ”も否定せずに彼らの漂着にずっと寄り添ってくれた。余白たっぷりに描かれる愛おしくも不完全なキャラクターたちの漂着が、時に無様で滑稽で、でも切実で胸を刺すように痛く、その中に“大冒険”もあって……どうしたって過剰になりがちな題材を、決してtoo muchにはせず、だけれども終始心を捉えて離さない非常に濃厚な時間を見せてくれた。

■配信情報
『うきわ ―友達以上、不倫未満―』
動画配信サービス「Paravi」「ひかりTV」にて配信中
出演:門脇麦、森山直太朗、田中樹(SixTONES)、高橋文哉、小西桜子、大東駿介、蓮佛美沙子、西田尚美
原作:野村宗弘『うきわ』(小学館ビッグスピリッツコミックス)
監督:風間太樹、太田良
脚本:倉光泰子、神田優
音楽:坂本秀一
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:本間かなみ(テレビ東京)、滝山直史(テレビ東京)、唯野友歩(AOI Pro.)
制作:テレビ東京/AOI Pro.
製作著作:「うきわ ―友達以上、不倫未満―」製作委員会
(c)野村宗弘・小学館/「うきわ ―友達以上、不倫未満―」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/ukiwa/
公式Twitter:@tx_ukiwa

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