劇場版『僕のヒーローアカデミア』6周目にして再び首位に 大ヒット記録の理由とは

劇場版『ヒロアカ』大ヒットの理由

前2作よりも多い入場者特典

 アニメ映画でおなじみとなった入場者特典だが、『ヒロアカ映画3』でもやはり用意されている。過去2作では、いずれも100万部用意された入場者特典だが、今回は1.5倍の150万部の配布となった。当初は今回も100万部配布の予定だったようだが、公開直前に急遽増刷が発表された。

 ちなみに、150万部という数は、『THE LAST -NARUTO THE MOVIE-』の入場者特典の配布数と同じだ。『ヒロアカ』は少年ジャンプにおいて、『NARUTO』と入れ替わるようなタイミングで連載が始まり、その後継と目されていた作品だが、ここにきてその先達と同じレベルの存在感を持つようになってきたと言えるかもしれない。だが、2019年の『ONE PIECE STAMPEDE』では300万部、日本映画の興行収入新記録を打ち立てた『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」は450万部の入場者特典が用意されていた。これらのモンスター級のタイトルを比べると、まだまだ少ない。

 それに加えて、今回は第2弾(50万部)、第3弾(30万部)の入場者特典の配布も行っている。総じて、前2作よりも入場者特典は分厚くなっており、今回は成績を伸ばすぞという、プロモーションチームの意気込みが感じられる。

 前2作の劇場版でも実施した4D上映は、今回も好調のようだ。筆者がよく利用するシネコンでもしょっちゅう満席を出していた(コロナで販売座席数は半分だが)。4D上映は、通常上映とは異なる体験を提供できるため、リピーターを多く作れる施策だが、それと同じタイミングで第2弾の入場者特典の配布が始まったのも、4周目にして興行収入ランキング1位を獲得する原動力となっているだろう。6周目の1位返り咲きも、第3弾の入場者特典配布のタイミングだ。特典は動員のカンフル剤だが、その役目をきちんと果たしていると言えそうだ。

 しかし、特典が機能するのは、作品への熱い支持があるからこそ。『ヒロアカ』というコンテンツが原作とアニメを通して培ってきた分厚いファン層があるから、ここまで興行を伸ばすことができているということでもある。

 公開初週の東宝によるアンケートでは、「非常に良かった」「良かった」と回答したのが97.8%という驚異的な数字を記録したそうだ(参考:映画『ヒロアカ』興収20.6億円突破、シリーズ歴代1位の大ヒット|オリコン|北國新聞)。ファンが望む作品に仕上がっているから、興行収入も伸びているというシンプルな事実があることも見逃してはいけない。

 興行収入30億円突破は、歴代少年ジャンプ原作のアニメ映画の中でも高い数字だ。これは、『NARUTO』映画シリーズで最高の成績をあげた『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』の26.2億円を超える数字であり、これより上には、『ドラゴンボール』と『ONE PIECE』数作、そして『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』だけだ。『ヒロアカ』は、映画作品においては、これらレジェンド級のタイトルと肩を並べる存在になったと言っていいだろう。だが、『ヒロアカ』の人気は、今後まだまだ上昇の余地があるはず。どこまで上り詰めることができるのか、楽しみだ。

■公開情報
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』
全国東宝系にて公開中
声の出演:山下大輝、岡本信彦、梶裕貴、稲田徹、中村悠一、三宅健太、中井和哉、吉沢亮ほか
原作・総監修・キャラクター原案:堀越耕平(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:長崎健司
脚本:黒田洋介
キャラクターデザイン:馬越嘉彦
配給:東宝
(c)2021「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」製作委員会 (c)堀越耕平/集英社
公式サイト:https://heroaca-movie.com/

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