Netflix『ケイト』の大ヒットが表す、「映画館で見たい作品」と「配信でもいい作品」の違い

Netflix『ケイト』大ヒットを考察

 それを象徴するような作品が、先週金曜日に配信されて、非公式のデータながら世界中でNetflix映画部門の視聴者数1位(参考:https://flixpatrol.com/title/kate/)を独走している『ケイト』だ(9月16日現在、日本では映画部門の2位)。『ニキータ』(1990年)、『レオン』(1994年)、『ハンナ』(2011年)など、これまで散々作られてきた女性暗殺者モノに現代的ジェンダー観をふまえたツイストを加え、全編日本を舞台にしてヤクザ組織との抗争や陰謀を描いた同作。物語のスピード感も予想を裏切る展開もあり(日本の観客の場合はそれに加えて日本の都市描写や風俗描写の興味深さもあり)、1時間46分それなりに楽しめるものの、映画としてはあくまでもB級アクション映画。それも、結果としてB級になったというのではなく、最初から明確にB級を狙って、ちゃんとその狙い通りになったような作品だ。

 日本でも海外でも、メディアではNetflixオリジナル映画は賞狙いの作家性の強い作品の話題が目立つが、その話題性の高さと視聴者の数は乖離してきた。実は多くの人に見られているのは、同じNetflixオリジナル映画でも気軽に見られるアクション映画やコメディ映画。一方で、ワーナーのドゥニ・ヴィルヌーヴ監督新作『DUNE/デューン 砂の惑星』やディズニー(MCU作品)のクロエ・ジャオ監督新作『エターナルズ』といった映画館の大きなスクリーンで見られることを前提に作られたスペクタクル大作は、仮に配信で気軽に見られるようになっても多くの観客が映画館での鑑賞を選ぶだろう(というか、そうである「べき」作品だ)。ストリーミングサービスのプラットフォーム戦争、及びパンデミックを経て、「映画館で見たい作品」と「配信でもいい作品」の違いに、世界中の観客はより意識的になってきている。

■配信情報
『ケイト』
Netflixにて独占配信中

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「興行成績一刀両断」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる