『おかえりモネ』高岡早紀&マイコの何度も噛み締めたい言葉 莉子が主役だった第17週

『おかえりモネ』莉子を救った高村の言葉

 莉子が百音に「傷ついた経験、そういうのがある人はやっぱり強い。私にはない。ごめんなさい」と言ったのに対して、マイコは「そうよ、それは駄目よ。傷ついてる人の方が強いなんてそんな、そういうことは言っちゃ駄目。傷ついていいなんてことない」と切り出した。すぐに「すみません」と謝る莉子。「ごめんね、急に。でも、傷ついて本当に動けなくなってしまう人もいるから」というのは、引きこもって夜中に風呂掃除をしている菜津の幼なじみの宇田川のことだと百音には分かる。

「神野さんが今まで心からハッピーに生きてこられたんだとしたら、それはすばらしいことよ。神野さんがそういう力を持った人だったんだし、周りもすてきな人たちだったんだと思う。人は傷つく必要なんかない。絶対にない」

 穏やかな菜津の力のこもった言葉に莉子は「そうですね」と静かに納得する。そして、自分の強みは考えることだという結論を自分で導き出すことに成功した。

 第6週「大人たちの青春」で「先生は挫折した経験がなさそう」という百音に菅波が「傷ついたことのある人間の方が共感性が高いとか、それも一理あるとは思いますが、自分の怠惰の言い訳にその論理を持ち出す人間を僕は許せない」と言っていた。百音の父・耕治(内野聖陽)は若い頃に「音楽やるようなヤツはもっと影とか、傷とか、不幸とか、そういうの背負ってねえと本当の色気は出ねえって」と、莉子と同じように悩んだ時期があったことが明かされている。

 もともとの性格といってしまえばそれまでだが、幼なじみで漁師の新次(浅野忠信)が震災で受けた傷から立ち直れないことを耕治は誰よりも心配し、ずっと心を痛めてきた。これからも耕治は自分にできること、協力を惜しまないだろう。莉子にしても、朝岡が与えた試練について、朝岡を責めることもなく、ライバルの内田に対して悪意を持つこともなく、自分の問題として真剣に受け止め、素直に周囲の言葉に耳を傾けて気づきを得た。

 伏線回収というと軽く聞こえるが、すべてが水でつながっていると百音が感じているように、大人たちが経験してきたことが若者たちへとつながっていることがさらに強調される展開だった。パワーアップした莉子にも、さらなる物語の広がりにも期待したいところだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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