『#家族募集します』『着飾る恋』『カルテット』 シェアハウスはなぜドラマの定番に?

“シェアハウス”はなぜドラマの定番に?

 また、これまで描かれてきた多くのシェアハウスドラマと『#家族募集します』で大きく異なるのは、親子で暮らすという点だ。親の決断によって、子どもの暮らしも一変する。親と子という最小単位の人間模様が常に付随してくるから、勢いで決められないという場面も多い。もちろんシングルであるから、新たな恋愛という展開も決して悪いことではないのだが、子どものことを考えると独身時代のそれとは違って簡単にはいかない。

 だが、他人との血の繋がらない家族を大切にしていくからこそ、血の繋がりのある実の親子の関係性にも客観性と冷静さが加わり、さらに物語の層が厚くなっていくのも興味深いところだ。それぞれの家の中だけでは得られなかった柔軟な視点や新しい考え方。登場人物たちが感じていた生きづらさは、もしかしたら自分で自分にかけていた呪縛だったのかもしれないと気づかせてくれることもある。

 特に子育てに関しては、誰もが手探りでお手本を求めて右往左往するものだ。そのタイミングで様々な価値観の人と触れ合うことの大切さを描くことも、多様性を認めていこうというこれからの社会に向けた本作の挑戦なのかもしれない。

 過酷な職業に取り組む人も、影響力のあるインフルエンサーも、夢を諦めきれない大人になったキリギリスたちも、ワンオペ育児に奮闘するシングルファザーやシングルマザーも……誰かと弱さを分かち合えることができれば、新たに生きる力が湧いてくるもの。

 シェアハウスドラマが描くのは、社会全体の大きな問題と捉えると、途方もなく感じられることを、まず小さな家の中から“やってみた”というものなのかもしれない。なぜなら視点をグッと引いて見れば、同じ地域、同じ国、同じ地球のもとで、シェアして生きていると言えるのだから。

 お互いをサポートし合って生きていこうとする姿を「理想論だ」と言ったり、「私にはわからない」と理解できない人もいる。それでも、それぞれの意見に耳を傾け、できることから歩み寄って笑い合う姿を見ることで、希望が湧いてくる。この小さなお好み焼き屋にじやの2階でできたことは、きっと違う家でも実現できることかもしれない。そんな家が少しずつ増えて、そうした笑顔であふれる地球になるのではないか、と。

■放送情報
金曜ドラマ『#家族募集します』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:重岡大毅(ジャニーズWEST)、 木村文乃、仲野太賀、岸井ゆきの、佐藤遙灯、宮崎莉里沙、三浦綺羅、丸山礼
脚本:マギー
演出:福田亮介、村尾嘉昭
プロデューサー:佐久間晃嗣、岩崎愛奈、那須田淳
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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