『TOKYO MER』が突きつける不条理な死 佐藤栞里が演技のポテンシャルを開花

『TOKYO MER』が突きつける不条理さ

 1年前、椿が立ち去る前に喜多見にかけた言葉、「私を助けたことを必ず後悔させます」。その真意はあまりにも悲劇的なTOKYO MER発足後初の死者1名として明らかになった。爆破予告も喜多見に送ったメールも、裏金の公表もすべてブラフで、本当の目的は別にあった。「わかってほしかったんです。世の中は不条理だってことを」。それは喜多見の一番大切なものを奪うことだった。生命に対して畏敬の念で接する喜多見に対して、椿は友情から仲間にしようとしたのではなく、憎悪に身を染めることでテロリストの側に引き込もうとしたのだ。命を救うためにどんな危険もいとわない崇高な心にぬぐい去れない毒をさしのべること。生の対義語は死だが、私たちが死を恐れるのはそれが絶望をもたらすからだ。絶望と恐怖によって生を支配するテロリストの本性がむき出しになった瞬間だった。

 涼香を演じた佐藤栞里は、連続ドラマレギュラー出演は本作が初めて。ナチュラルな飾らない笑顔と『王様のブランチ』(TBS系)でおなじみの佐藤だが、本作の涼香は喜多見の空白の1年を知る家族として、またMERをそばで見守り、喜多見と音羽をつなぐ存在として回を追うごとにその重要度が増していった。特に感情の機微を湛えた表情の演技は素晴らしく、俳優として活躍の場が広がりそうだ。

■放送情報
日曜劇場『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(TBS系)
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:鈴木亮平、賀来賢人、中条あやみ、要潤、小手伸也、 佐野勇斗、佐藤栞里、フォンチー、佐藤寛太、菜々緒、鶴見辰吾、橋本さとし、渡辺真起子、仲里依紗、石田ゆり子
脚本:黒岩勉
プロデューサー:武藤淳、渡辺良介、八木亜未
演出:松木彩、平野俊一
製作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/TokyoMER_tbs/
公式Twitter:@tokyo_mer_tbs

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる