シャマラン新作『オールド』、初登場7位 監督の意向は無条件に尊重されるべきか?

監督の意向は無条件に尊重されるべきか?

 というのも、本作がアメリカで公開されたのは日本公開よりも1ヶ月以上前の7月23日。ヨーロッパや中南米の各国でも、その前後に公開されている。海外の記事の日付を見ると、どうやら各国でも同じように公開前のレビューが出ないような施策がとられていたようだが、いずれにせよ日本公開の1ヶ月前には数々の批評や採点が世に出ている。当然、それを訳して紹介している日本のメディアもあるし、そうじゃなくても外国語を普通に読める映画ファン、あるいは(近年急激にその精度が高まっている)自動翻訳にかけて読む映画ファンも少なくないだろう。つまり、「マスコミ試写をおこなわない」のは、その国が世界初公開であるか、世界同時公開(数日単位のズレは含む)ではないと、インターネットが情報の中心となった現在はほとんど意味がないと自分は思うのだ。スポイラー(ネタバレ)厳禁ならば、それはそれで別途、配給サイドから指示をすればいい。

 こういうことを言うと、マスコミ関係者の特権を振りかざしているように思われる人もいるかもしれないが、個人的には正直、その作品について仕事が発生するなどの特別な事情がない限り、平日に時間を合わせて試写に足を運ぶコスト(仕事稼働日の半日が潰れる)はバカにならないし、楽しみにしている作品は週末に家族と一緒に映画館で観る方がよっぽど楽しいし(郊外のシネコンなら駐車場もサービスでタダになるし)、客入りや他の観客のリアクションを知る上でも映画館で観る方がよっぽど仕事上の役に立つ。ストリーミングでも見きれない数の新作が次から次へと配信されるようになってからはなおさら、「試写に行く」のは仕事以外の何ものでもなくなっている(もちろん、「仕事」だからこそ重要なわけだが)。

 実際、マスコミ試写がおこなわれかった『オールド』は、日本公開前の情報が極端に少なく(地上波のテレビCMではよく流れていたようなので、プロモーションをそこに集中させるしかなかったのだろう)、シャマラン好きの間でも「公開されてから気がついた」との声が多く上がっていた。

 監督及び権利元から「試写をおこなわないように」と指示があれば、原則としてそれは守るべきだ。でも、その作品が日本で世界初公開か、あるいは世界同時公開(数日単位のズレは含む)でないならば、それは作品のプロモーションとしては(単純に露出量的にも)マイナスにしかならないので、そのことを監督及び権利元に伝えてしぶとく交渉するのは国内配給にとって不可欠な仕事なのではないだろうか。もし今回、シャマランとそうした交渉をめちゃくちゃハードにした上でそれでも説得できなかったのか、あるいは北米と同時公開で動いていたのに不可抗力な理由によって公開が遅れたのだとしたら、すみません。

■公開情報
『オールド』
全国公開中
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ヴィッキー・クリープス、アレックス・ウルフ、トーマシン・マッケンジーほか
原案:『Sandcastle』(Pierre Oscar Levy and Frederik Peeters)
監督・脚本:M・ナイト・シャマラン
製作:M・ナイト・シャマラン、マーク・ビエンストックほか
配給:東宝東和
(c)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
公式サイト:old-movie.jp
公式Twitter:@uni_horror

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「興行成績一刀両断」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる