シャマラン新作『オールド』、初登場7位 監督の意向は無条件に尊重されるべきか?

監督の意向は無条件に尊重されるべきか?

 先週末の動員ランキングは、『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』が公開4週目にして初の1位に。土日2日間の動員は12万8000人、興収は2億400万円。前週5位からのジャンプアップの要因は、8月28日から配布された第2弾入場者プレゼント(原作者・堀越耕平描き下ろし複製ミニ色紙)とのこと。改めて、アニメーション作品のファンダムの特殊さと、(アニメーション作品ならばどの作品でも使えるわけではないだろうが)その手法が使えるアドバンテージを思い知らされる。

 さて、今回取り上げたいのは、8月27日に公開、オープニング3日間で動員5万7073人、興収8326万5010円を記録して週末の動員ランキングでは初登場7位となったM・ナイト・シャマラン監督の新作『オールド』だ。M・ナイト・シャマランといえば、1999年に公開された日本公開作品としてはデビュー作となる『シックス・センス』が興収76億9600万円、年間興収ランキングでも4位となる大ヒットになったことで知られる、21世紀の映画界においては数少ない「監督の名前で客を呼べる監督」の一人。もっとも、「監督の名前で客が呼べる監督」というのは今や海外での話で、2019年に公開されて全米初登場1位となった前作『ミスター・ガラス』の日本での興収は1億4000万円。同じブルース・ウィリス出演作であることもふまえて敢えて比較をするなら、その成績は50分の1以下という衝撃的な数字となっている。

 それでも、自分も含め根強いファンも多く、だからこそスター映画の要素はほとんど皆無と言っていい今回の『オールド』も、一定の成績をおさめることができているのだろう。しかし、今回の『オールド』の配給・宣伝に関しては、一つ、疑問を呈しておきたい。というのも、今作はM・ナイト・シャマラン本人の意向で、日本ではマスコミ試写がまったくおこなわれなかったのだ。特に新型コロナウイルスのパンデミック以降、ハリウッド映画の公開スケジュールが全体的に大きく乱れていることもあるのだろう、作品によってはマスコミ試写がおこなわれないケースも増えてはきているものの、それとは別におこなわれる関係者向けの試写も含めて、今作に関しては情報管理が相当徹底していた。

 「マスコミ試写をおこなわない」のは、日本でも庵野秀明が社長を務めるカラー関連作品など権利者の権限が強い作品では稀にあることで、作品公開前に批評が出ないことのメリットとデメリットを(おそらくは)慎重に天秤にかけた上での権利者の意向については尊重されるべきだろう。シャマラン作品も配給こそメジャーだが(アメリカはユニバーサル・ピクチャーズ、日本は東宝東和)、製作に関しては毎作のようにシャマラン自身が私財を持ち出すことで知られていて、作品のプロモーションにおいて特別な発言力があるのにはそのような背景がある。ただし、今回の『オールド』に関してはちょっと事情は違うのだ。

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