松岡昌宏の孤軍奮闘ぶりが加速する 『連続ドラマW 密告はうたう』混沌たる事件の真相

松岡昌宏の“静”の芝居に引き込まれる

 後輩を失ったことへの罪悪感と喪失感、そして警察官として追うべき犯人がありながら、仲間のことを追わなければならない現在進行形の孤独。刑事ドラマとしてもミステリーとしても、ここまであらゆるものを抱え込んだ主人公というのはなかなか稀有な存在だ。近年の『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)などのキャラクター性の強い役柄からすれば、松岡がこんなにも複雑な役柄に染まりきっているというのは、このドラマにおける一番の予想外といってもいいかもしれない。現在パートでのやつれきって影を帯びた姿と、回想シーンで現れる捜査一課時代の姿とのギャップ。いつ抑えこんだ感情が爆発するのかと、見ていてひやひやするほど紙一重の“静”の芝居に引きこまれずにはいられない。

 そして皆口という感情が一切表情にあらわれないミステリアスな“監察対象”がよく似合う泉をはじめ、まったく素性が見えない冷ややかで人間離れした雰囲気が漂う須賀を演じる池田に、安楽椅子探偵さながら人事一課の部屋から出ることなくすべてを取りまとめる能馬を演じる仲村の厳しさと、佐良を取り巻く登場人物から脇役に至るまでハードボイルドな作風を生み出すためのアンサンブルが効果的に働いている。ここでもうひとつの予想外を挙げれば、佐々木役のアキラ100%だろう。情報屋という立ち回り上、一見狡猾そうに見えながらも斎藤への恩義から皆口に協力する。この人間味あふれる感じは、冷静沈着を絵に描いたような登場人物が蠢きまわるなかで実に良いアクセントになっている。

 9月5日に放送される第3話では、佐良の孤軍奮闘ぶりがさらに加速していく。皆口の不正情報漏洩疑惑に端を発し、2年前の殺人事件とそれをめぐる捜査の内幕と、5年前の事件。それら3つの事件がみっちりと交錯していくなかで、独自に調べを進めていく佐良。刑事だった頃の表情を取り戻しつつも、“ジンイチ”であるということとの板挟みに遭う佐良の揺れ動く感情と共に、ますます混沌としていく事件の真相。最終話まで息をつく暇もなさそうだ。

 ※WOWOWオンデマンドでは、配信加入ルートにおいては申し込み月であればいつでも解約可能となる無料トライアルを実施

■放送情報
『連続ドラマW 密告はうたう 警視庁監察ファイル』(全6話)
WOWOWプライム、WOWOW 4K、WOWOWオンデマンドにて、毎週日曜夜10時~最新話放送・配信中。
WOWOWオンデマンドでは放送回をアーカイブ配信中。
出演:松岡昌宏、泉里香、池田鉄洋、三浦誠己、戸塚祥太(A.B.C-Z)、秋元才加、眞島秀和、ブラザートム、松浦祐也、アキラ100%、千葉哲也、甲本雅裕、木下ほうか、木村祐一、鶴見辰吾、仲村トオル
原作:伊兼源太郎『密告はうたう 警視庁監察ファイル』(実業之日本社文庫刊)
監督:内片輝
脚本:鈴木謙一
音楽:大間々昂
企画・プロデュース:武田吉孝、下田淳行
プロデューサー:井口正俊、星野秀樹
制作プロダクション:ツインズジャパン
製作著作:WOWOW
公式サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/mikkoku/

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