佐藤信介監督による『ヒロアカ』ハリウッド実写版はどうなる? 過去の事例などから考察

 日本人監督の抜擢により、キャストにも日本人が抜擢される可能性も高いのだろうか。

「『THE JUON/呪怨』の場合は海外俳優がメインでしたが、日本を舞台にした作品なので、もちろん日本人キャストも出演していました。『プリズナーズ・オブ・ゴーストランド』でも、坂口拓さんや栗原類さん、渡辺哲さんなど日本人キャストが出演しています。日本の作品をハリウッドに限らず実写化する際のキャスティングについては、ビジュアルとの乖離という点で、特にファンから厳しく言われてきたことではあります。そんな中でも、佐藤監督は『キングダム』など近年手がけた作品で、キャストとキャラクターがうまくハマっている点も評価されています。公開中の映画『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』でオリジナルキャラクター、ロディ・ソウルの声優を担当している吉沢亮さんなど、もしかしたらキャスティングの可能性があるかもしれません。声優としての芝居の実力も評価されていますし、雑誌『CUT』では吉沢さん自らの持ち込み企画で『ヒロアカ』のデクとロディ・ソウルに扮した姿を披露していました。、佐藤監督の『キングダム』では、漂とエイ政の二役を演じており、漫画のキャラになっても違和感がないことは証明済みです。ただ、海外作品で日本人キャストが起用される際、演技力よりもいかに英語力が重要視されるという問題点があります。『レディ・プレイヤー1』でハリウッドデビューを果たした森崎ウィンさんが、スティーヴン・スピルバーグ監督に抜擢された大きな要因の一つとして、英語のセリフを流暢に話せた点を挙げていました。『ゴジラvsコング』の小栗旬さんも、撮影のために1年間アメリカに住んでいましたが、撮影期間の英語にまつわる苦労を語っていました。英語は、ただセリフが話せるだけではダメで、撮影中などスタッフとのコミュニケーションでも求められる、不可欠なものだからです。そういった面でも英語力は割と大前提になってしまっていて、日本人キャストの起用は現実的に考えるとありえるかもしれませんが、そのハードルは高いと思います」

吉沢亮がデクとロディ・ソウルに扮したビジュアル『CUT 2021年8月号』(7月19日発売)

 佐藤監督が抜擢されたことで、映像面ではどのようなことが期待できるのか。アナイス氏は以下のように語る。

「『ヒロアカ』は漫画でもアニメでも、個性を使ったときの映像効果や、ビジュアルの動きが肝になっています。そのような特殊効果やアクションは、海外のスタジオがビッグバジェットで作った方が、しっかりしたものになるとは思います。加えて佐藤監督ということで、そこの魅せ方については安心しています。例えば『いぬやしき』でも素晴らしい動きの演出をされていたので、ああいう建物から建物に移るときの俊足感の再現などには期待感があります」

 今後、脚本家をはじめとするスタッフやキャストが発表されていくことになるが、一体どんな作品になるのか。ハリウッド実写版の映画に日本人監督が選ばれたことは、原作の意図を汲んだ作品への大きな一歩であることに違いない。

■公開情報
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』
全国公開中
原作・総監修・キャラクター原案:堀越耕平(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:長崎健司
脚本:黒田洋介
キャラクターデザイン:馬越嘉彦
音楽:林ゆうき
アニメーション制作:ボンズ
配給:東宝
(c)2021「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」製作委員会 (c)堀越耕平/集英社

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