『小林さんちのメイドラゴンS』は演出が凄い! 京アニの力量感じるシーンを解説

 ここでは5話を中心に紹介したが、イルル初登場シーンで盛り上がる1話から、こういったメリハリさと柔らかさが混ざり合った作劇は絶え間なく続いている。

 第1話では原画スタッフが8名(作画監督の岡村氏含め)だが、第5話に至っては作画監督1名に原画スタッフが6名のみ。昨今のアニメーション作品では外部の制作会社からのヘルプも入って十数名以上の原画スタッフで制作されることもあるが、それとは逆の工法ともいえる。

 以前から京都アニメーションでは独特の作画・色彩のタッチを崩さないためか、京アニ内で作画・仕上げ・美術の工程をすべて終わらせ、少数精鋭で制作されることが数多かった。2019年の事件後となった本作品でも、変わらない工法とフローを継続しているのがわかる。

 最後にアップテンポで軽やかにスタートした本作第1話の絵コンテには、本作で監督を務める石原立也とともに、故・武本康弘氏がクレジットされていたこともふれておきたい。

 武本氏は、『フルメタル・パニック?ふもっふ』(2003年/フジテレビ)で監督デビューを果たし、『らき☆すた』(2007年)『涼宮ハルヒの憂鬱(2009年版)』『氷菓』(2012年)『甘城ブリリアントパーク』(2014年)で監督を務め、第1期『小林さんちのメイドラゴン』では監督だけでなく、脚本・絵コンテも務めていた。

 2019年の事件で亡くなった同氏の感触が、本作品のどの部分に残されているかは一見しただけではほとんど分からない。だが、京都アニメーションがこれまで魅せてきたタッチ・作風は、本作にもしっかりと息づいている。今後制作・放映予定となっている劇場版『Free!』二部作と劇場版『ツルネ』も、ゆっくりとした心で待っていたい。

■放送情報
TVアニメ『小林さんちのメイドラゴンS』
ABCテレビ、TOKYO MX、テレビ愛知、BS11、AT-Xにて放送中
ABCテレビ:毎週水曜26:14〜放送
TOKYO MX:毎週水曜24:00〜放送
テレビ愛知:毎週水曜26:35〜放送
BS11:毎週木曜24:00〜放送
AT-X:毎週土曜21:00〜放送
原作:クール教信者(双葉社『月刊アクション』連載中)
監督:石原立也
シリーズ監督:武本康弘
シリーズ構成:山田由香
キャラクターデザイン:門脇未来
総作画監督:丸木宣明
美術監督:落合翔子
3D美術:鵜ノ口穣二
色彩設計:秦あずみ
撮影監督:植田弘貴
3D監督:冨板紀宏
音響監督:鶴岡陽太
音楽:伊藤真澄
音楽制作:ランティス、ハートカンパニー
アニメーション制作:京都アニメーション
製作:ドラゴン生活向上委員会
声の出演:田村睦心、桑原由気、長縄まりあ、高田憂希、高橋ミナミ、嶺内ともみ、小野大輔、中村悠一、加藤英美里、後藤邑子、石原夏織
OP主題歌:「愛のシュプリーム!」fhana
ED主題歌:「めいど・うぃず・どらごんず ︎」スーパーちょろゴンず [トール(CV.桑原由気)、カンナ(CV.長縄まりあ)、エルマ(CV.高田憂希)、ルコア(CV.高橋ミナミ)、イルル(CV.嶺内ともみ)]
(c)クール教信者・双葉社/ドラゴン生活向上委員会
公式サイト:http://maidragon.jp
公式Twitter:@maidragon_anime

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アニメシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる