『おかえりモネ』菅波と『G線上』理人に共通点? 安達奈緒子脚本の男性キャラの魅力

安達脚本に登場する男性キャラの魅力

 わざと、あるいは恋愛テク的に敢えて“含み”を持たせたり、明言を避ける“確信犯”であれば話は違うのだが、菅波にしろ理人にせよあまりに実直で信頼に足る人物だというのがまずベースにあった上で、それをひけらかすこともない。彼らは絶対にその場しのぎの安易な“気休め”は口にしないし、パーソナルスペースがしっかりあって自分のそれも相手のそれも同じようにとても尊重する。人に対して無関心で興味がないから一定の距離を取ってしまうのではなく、誰よりも責任感が強いからこそ不用意に“誰かの期待”を背負ったり、“誰かの拠り所”になりすぎてしまうことにもとても慎重になるのだろう。自分以外に大切な人やものがあることは生きる上での活力にも喜びにもなり得るが、同時に最大の弱点で急所にもなり得るのだ。

 『おかえりモネ』にしろ『G線上』にしろ「呼び名のない関係性」や「固定されない関係性」の心地良さや永続性、一方で不安定だからこその瞬きや刹那をここまで贅沢に存分に見せてくれる作品はそうそうないかと思う。「名前のない関係性」こそある意味互いの意志と選択がないと継続はしないし、どちらかが距離感を見誤ってしまうことで脆くも崩れ去ってしまう危うさを孕んでいるのだ。

 当然のことだが、人も言動も、そして関係性も重層的であり、一側面のみで判断することなどできない。自分の過去と現在、相手の過去と現在、A面とB面が織り交ぜになることでその意味合いは幾重にも折り重なることを安達奈緒子脚本作品はずっと教えてくれている。

 第13週「風を切って進め」では百音と菅波にさらなる共通項、接点が増えていくようで、彼の過去の出来事、その時に負った傷についても明かされていきそうだ。ここから彼らがどんな関係性を紡いでいくのか引き続き見守りたい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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