亀梨和也主演『正義の天秤』で話題 時代と密接した「NHK土曜ドラマ」は“いま”注目の枠

 『ここぼく』につづく新作が6月期の『ひきこもり先生』だ。NHKは昨年、ひきこもりについて考えるプロジェクトを立ち上げており、松山ケンイチ主演で『こもりびと』(2020年)というドラマも放送している。

 11年間のひきこもり生活を脱した焼き鳥店店主に白羽の矢が立ち、非常勤講師として市立中学校の不登校教室(通称:STEPルーム)を任せられることになる。生徒たちから“ヤキトリ”と慕われる主人公には、福田雄一監督作品『銀魂』や『今日から俺は‼』など数多くの作品に出演し、クイズ番組『99人の壁』では司会も務める佐藤二朗を抜擢。幅広い世代に知られた佐藤を迎えることで、ドラマ従来のターゲット層だけではなく、実際に不登校で悩む子どもたちへ作品を届けようとする意図があったのかもしれない。

 「先生と生徒」「大人と子ども」の関係性ではなく、悩める「同士」として互いを励ましあったヤキトリと生徒たちの物語は、最終回で私たちの現実とリンクする。2020年2月27日。当時の安倍元首相から全国の学校へ「臨時休校要請」が通達されたのだ。ドラマの時間軸では、STEPルームの生徒たちが卒業式に出席しようと覚悟を決めた矢先の出来事だった。

 コロナ禍に入ってからも多くのドラマが制作され、コロナ禍を感じさせるドラマも多く観てきたが、コロナ禍における学生たちの姿(特に休校要請)を取り上げたのは今作が初めてだったように思う。当時の医療体制や新型コロナウイルスに対しての不十分な情報、そして感染爆発の今を思うと、時期尚早だったとは言い切れない。しかし、前情報もなしに発せられた総理のたった一言で、生徒や教職員、教育委員会など全ての学校関係者に大きな戸惑いと混乱を齎したのは事実だ。

 『ひきこもり先生』はひきこもりに苦しむ人々だけではなく、当たり前のように見過ごされてしまいがちな、か弱き学生たちの声をも掬い上げている。二重の祈りが込められた今作は“2021年のドラマ”として、多くの人にインプットされるべき作品だと思った。

 企画から放送まで比較的短く、あらゆる世代の人に訴求できることは、テレビドラマならではの強みだ。2020年に刊行された同名原作を扱う『正義の天秤』も“いま”と密接した作品になるだろう。亀梨演じる鷹野“和也”が掲げる正義とは何なのか、作品からの声にも耳を傾けたい。

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