2作連続公開延期『クレヨンしんちゃん』 コロナ禍映画興行における「ファミリー層」の壁

コロナ禍映画興行「ファミリー層」の壁

 先週末の動員ランキングは『竜とそばかすの姫』が土日2日間で動員28万4000人、興収3億6500万円をあげて、3週連続1位となった。8月1日までの17日間の累計は動員が236万3871人、興収が33億1671万950円。コロナ禍を吹き飛ばす勢いでヒット街道を驀進している。同じようにコロナ禍においても目をみはるような成績をあげているのが、公開4週目に入ってもトップ3をキープしている『東京リベンジャーズ』。8月1日までの24日間の累計は動員が207万3115人、興収が27億6582万4440円。『竜とそばかすの姫』、『東京リベンジャーズ』ともに、特徴は観客層の中心が10代、20代であること。パンデミック期に入って以降、「映画興行を支えているのは若い世代」という傾向が昨年からずっと続いていることになる。

 一方、コロナ禍において大きな影響を受け続けているのがファミリー層向けの作品だ。先週末公開されて初登場2位となった『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』の土日2日間の動員は21万1000人、興収は2億3900万円。昨年9月11日に公開された前作『激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』との比較では、約91%の数字にとどまっている。また、そもそもその前作『激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』も最終興収は11.8億円で、コロナ禍以前の2019年に公開された前々作『新婚旅行ハリケーン 〜失われたひろし〜』の最終興収20.8億円から約43%のダウンと、半減近く大きく落ち込んでいるのだ。

 今年の『謎メキ!花の天カス学園』も、昨年の『新婚旅行ハリケーン 〜失われたひろし〜』も、本来は『クレヨンしんちゃん』シリーズ恒例のGW前の4月に公開が予定されていた作品で、それぞれ新型コロナウイルスの感染拡大を受けて公開が数ヶ月後ろ倒しになった経緯がある。もっとも、それを言うなら今もまさに東京は緊急事態宣言の真っ最中(しかもそれがさらに、とりあえず8月末まで延長)なわけで、今作の公開に関しては「もう知らんがな」という配給の姿勢も見え隠れしているが、そこに不幸にも本格的なデルタ株の感染拡大がやってきてしまったわけだ。

 高齢者を中心にワクチン接種も進んではいるものの、デルタ株が猛威を奮っている現在の国内感染者は、ちょうど小さな子供を持つ親の世代である30代と40代が中心。世界的にも映画館内でのクラスターなどの報告はなく、映画館での観賞自体にはリスクが少ないということは引き続きしつこく訴えていきたいが、観賞にともなう移動や、多くのシネコンが入っている商業施設などでの食事などに心理的な忌避感が生じるとしても、特に家族連れならば無理のないことだ。

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