『ラブライブ!』シリーズは何を目指したのか Aqours誕生の第2作を解説

 ところで、アニメ作品は一度放送が終わってしまうと、作品周辺で進んでいた様々な活動のほとんどが止まってしまうことが通例である。それはキャラクターソングを歌うなどの音楽CDだけでなく、グッズ販売などを含めた展開のことも指している。

 大小さまざまなグッズだけでなく、アニメキャラクターを全面に押し出したビジュアルファンブックも数多くのファンに届けられ、すでに多岐に渡っていた『ラブライブ!』の展開は、まさに社会現象にも近しかった。この巨大な流れを引き継ぎ、そしてより大きく、永く発展していく使命が、『ラブライブ!サンシャイン!!』とAqoursの裏側には潜んでいた。

 無印『ラブライブ!』の1期が終了した直後に展開されていたスマートフォンゲーム『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』にAqoursのメンバーが追加されたのは、アニメ作品スタート直前となる2016年1月31日のこと(2016年7月から本格参戦としてSSRカードなどが追加)。アニメ作品が終了してもなお稼働し続けた本ゲームを通じて、『ラブライブ!』シリーズは次世代へとバトンを繋ぐ役目を担いつつ、キャラクターたちの活躍の場を与えることにチャレンジしている。μ'sとAqours2組の楽曲を楽しめるリズムゲームであるこのゲームには、後の作品に出演することになるキャラクターも、オリジナルキャラクターとして登場している。

 「0から1へ、1からその先へ!」という合言葉が印象的に響く『ラブライブ!サンシャイン!!』とAqoursによる継続的な活動は、『ラブライブ!』という狂熱を一過性のブームに収めるのではなく、コンセプチュアル性のある高熱源へと変化するためムーブメントだったともいえよう。

 その証拠に、μ'sとAqoursそれぞれが辿った足跡を照らし合わせながら、多くのファンが「ラブライブ!とはなにか?」「アイドルとはなにか?」という命題について考えることになり、時にはSNS上にて激しい会話が飛び交うほどのアツいファンダムが形作られることになった。

 まるで本物のアイドルと同じように、μ'sとAqours双方にファンがしっかりとついていくというのはアニソンシーンでみても異例なこと。これほどに熱量が高いファンダムが、作品が増えるごとに大きくなっていくというのは並大抵のことではない。本作が『ラブライブ!』シリーズの裾野を広げ、作品性への理解や好みをファンに自覚させたうえで、未来へとバトンを繋いだ作品だったと言えるのではないだろうか。

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