眞栄田郷敦、約2年で急成長の背景とは 『プロミス・シンデレラ』『東リベ』などから考察

眞栄田郷敦、約2年で急成長の背景とは?

 『私の家政夫ナギサさん』での役どころがわかりやすいが、主人公の後輩として行動を共にする機会も多く、登場シーンも頻繁に観られた。往々にして、テレビドラマにおいては主役の部下や後輩に、「次の主役級俳優」を抜てきすることが多い。俳優同士の関係値が、物語における関係性とリンクするわけだ。構造的にも先輩の演技を「受ける」タイミングが多いことで経験を培うことができ、視聴者にとっても「部下役の子は誰?」などと話題になりやすい。

 眞栄田においては生来の才能なのか、演技のレシーバーとしてのスキルが非常に高く、いわゆるドラマ的な「わかりやすくオーバーに魅せる演技」を主役が披露した際の、「テイストを合わせるのか、それともずらすのかの取捨選択」「的確にトーンを合わせる対応力」といった、状況判断力+対応力に秀でている。先輩俳優が説明的なアクションをした際のパスの拾い方、さらにはリアクションにおける場のならし方が、流水のごとく滑らかなのだ(そこを派手に行うのではなく、自然にこなしているところに、高い技術を感じさせる)。

『東京リベンジャーズ』(c)和久井健/講談社 (c)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会

 いわば、「落ち着かせられる」俳優であるということ。そんな彼のポテンシャルが明確に現れているのは、大ヒット中の映画『東京リベンジャーズ』だろう。本作で眞栄田が演じた三ツ谷隆は、不良集団「東京卍會」の創設メンバーのひとりで“お母さん”ポジション。原作漫画では、東京卍會の弐番隊隊長として引っ張りつつ、メンバーの特攻服を仕立てるなど手先が器用で面倒見がよく、かつ情に厚く懐が深い人物だ。

 イベントの場で主演の北村匠海は眞栄田のことを「緊張していた」と語っていたが、錚々たる先輩たちとの現場でも個性を発揮し、どっしりとした好演を披露していた(銀髪も見事に似合っている)。作品自体もシリーズ化が期待されているだけに、眞栄田版三ツ谷の今後ますますの活躍が期待される。本作はとかくキャストのハマりっぷりが絶妙だが、眞栄田も間違いなくその一人。原作ファンにおいては、今後待ち受けている三ツ谷の大きな見せ場が実写化される日を、心待ちにしているのではないか。

『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』(c)2021映画『ヒノマルソウル』製作委員会

 『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』では、周囲には自信ありげに振る舞い、一見スカした態度をとるものの、実は怪我のトラウマに苦しんでいるスキージャンプの選手という複雑なキャラクターに挑戦。怪我をしてしまって代表争いから脱落し、テストジャンパーとして帯同したはいいものの、身体が立ち直れていないなか、「虚勢」が剥がれ落ち、「本音」をさらけ出していくさまが大きな見どころだ。

 そんな彼が恐怖を克服していく姿は、感動ドラマの要素とも密接にリンク。作品のエモーションを引っ張っていくひとりとして役割をきっちりとこなし、田中圭や山田裕貴(『東京リベンジャーズ』でも共演)といった手練れたちとも臆せず渡り合っている。

 そして……。驚きなのは、『東京リベンジャーズ』も『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』も、元々は2020年公開予定だったということ。ということは、新型コロナウイルスのまん延がなければ、俳優デビューの翌年にはこの2作が公開されている予定だったのだ。そう考えると、眞栄田の“早すぎる売れっぷり”が説得力をもって伝わってくるのではないか。

『プロミス・シンデレラ』(c)TBS

 最新出演作は、現在放送中のテレビドラマ『プロミス・シンデレラ』。本作では、二階堂ふみ、岩田剛典と共に3人でメインキャラクターを演じており、早くもこの2人に並んだか!という驚きを感じた方も少なくないことだろう。

 本作では、「性悪高校生」と紹介されているように、実家が裕福なのを鼻にかけ、豪遊するわ、周囲に不遜な態度をとるわ、二階堂ふみ演じる主人公に“リアル人生ゲーム”を強要するわとやりたい放題なキャラクターに挑戦。『東京リベンジャーズ』の共演者たちから「真面目」「礼儀正しい」と言われている部分から見ると本人の性格とは真逆の役柄といえるだろうが、憎まれ役に垣間見えるナイーブさや、岩田剛典演じる完璧な兄へのコンプレックスから生じる脆さをきっちりと“揺らぎ”の演技で表現しており、二次元的なキャラクターを立体化しつつ、生身の人間らしい要素を注入している(普段よりも若干声を低くしているのも印象的だ)。

『プロミス・シンデレラ』(c)TBS

 また、本作で演じる役柄は物語が進むごとに成長を遂げていく人物でもあり、あえて一度視聴者から嫌われ、マイナスからプラスに転じさせることで愛情を抱かせるポジションでもある。今後話数を重ねる中で、眞栄田の演技の貢献度や存在感がますます増していくことになりそうだ。

 ざっと振り返っただけでも、規格外の躍進を継続中の眞栄田。彼が2022年以降、どのようなステージまで駆け上がっているのか、非常に楽しみだ。きっと、我々の予想を遥かに超えた“高み”へと、最短で駆け上がっていくことだろう。

■放送情報
火曜ドラマ『プロミス・シンデレラ』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:二階堂ふみ、眞栄田郷敦、松井玲奈、井之脇海、井之脇海、松村沙友理、堺小春、高橋克実、友近、森カンナ、金子ノブアキ、三田佳子(特別出演)、岩田剛典
原作:橘オレコ『プロミス・シンデレラ』
脚本:古家和尚
プロデューサー:橋本芙美、久松大地
演出:村上正典、都築淳一
製作:共同テレビ、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/promise_cinderella_tbs/
公式Twitter:@promisecinderella_tbs
公式Instagram:promisecinderella_tbs

■公開情報
『東京リベンジャーズ』
全国公開中
出演:北村匠海、山田裕貴、杉野遥亮、今田美桜、鈴木伸之、眞栄田郷敦、清水尋也、磯村勇斗、間宮祥太朗、吉沢亮
原作:和久井健『東京卍リベンジャーズ』(講談社『週刊少年マガジン』連載中)
監督:英勉
脚本:高橋泉
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)和久井健/講談社 (c)2020 映画「東京リベンジャーズ」製作委員会
公式サイト:tokyo-revengers.jp
公式Twitter:@revengers_movie
公式Instagram:@revengers_movie

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