初登場3位『ブラック・ウィドウ』 「映画館締め出し」問題よりも大きい問題とは?

「映画館締め出し」問題よりも大きい問題とは

 ここでもう一つ考慮されているのは、プレミアアクセスの料金がかかるとはいえ、やはり劇場公開と同時にディズニープラスで作品が配信されているということだ。待ちに待った新作、特にスペクタクルに富んだブロックバスター作品ならばなおさら、配信で見られるとしてもやっぱり映画館で見たいーーこれは一部の映画ファンの本音には違いないが、すべての観客がそうではないというのもまた事実だろう。特にイベントムービー色の強いマーベル・シネマティック・ユニバース映画の場合、公開から日数が経てば経つほど「配信で見ればいいか」となるのではないだろうか。また、熱心なファンに関しても、これまで少なくなかったリピーター需要に関しては、確実に配信が劇場の収益を食うことになるだろう。

 このように、映画館と配信の問題は様々な事情が入り込んでいて、単純にどちらの肩を持てばいいのかという問題ではない。ただ、一つだけ言えるのは、今後このまま配信がさらに広がっていけば(間違いなくそうなるだろう)、「映画館での上映期間」という意味での映画の寿命は確実に縮まるであろうことだ。日本における大ヒット作の多くが数ヶ月間に及ぶ異常なロングラン上映によって成り立っていることを考えると、実はこれこそが一番の問題なのではないだろうか。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「集英社新書プラス」「MOVIE WALKER PRESS」「メルカリマガジン」「キネマ旬報」「装苑」「GLOW」などで批評やコラムやインタビュー企画を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『ブラック・ウィドウ』
映画館&ディズニープラス プレミアアクセスにて公開中
※プレミアアクセスは追加支払いが必要
監督:ケイト・ショートランド
出演:スカーレット・ヨハンソン、フローレンス・ピュー、レイチェル・ワイズ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2021

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