4作目のモンスターバース作品『ゴジラvsコング』と4度目の緊急事態宣言

『ゴジラvsコング』と4度目の緊急事態宣言

 国内の映画興行において最大のシェアを占めるだけでなく、新作映画の公開を延期するかどうかの判断基準においても決定的な要因となる東京都で、昨年3月から数えて4度目の緊急事態宣言が発出される見込みだ。現在発出中のまん延防止等重点措置の期限が7月11日(日)まで。12日(月)以降は東京都が新たに緊急事態宣言に突入、既に緊急事態宣言下の沖縄県でも継続、大阪府、神奈川県、埼玉県、千葉県ではまん延防止等重点措置の継続になると報道されている。期間はいずれも8月22日まで。つまり、7月23日から8月8日にかけて強行開催される東京オリンピックは丸々緊急事態宣言下でおこなわれ、パラリンピックが始まる8月24日の2日前まで宣言は続くということになる。もちろん、そこで予定通り宣言が明けるとは限らない。デルタ株やオリンピックの影響などもあって、現在よりもさらにひどいことになっている可能性だって十分にあるだろう。

 このコラムは、今回の4度目の緊急事態宣言、そして緊急事態宣言下でのオリンピックの強行開催がいかにバカげているかについて書く場ではないので、あくまでも映画興行への影響について焦点を当てたい。これまでの3回の緊急事態宣言で改めて思い知らされたのは、国や都の映画館に対する独自の施策や方針があろうがなかろうが(返す返すも前回の東京都による映画館に対する独自方針はバカげていたが)、都内の多くの映画館やシネコンがそもそもその営業形態としてデパートやショッピングモールなどの大型商業施設と一蓮托生であるということだ。あくまでも7月8日午前の報道だが「酒類提供については中止を要請する一方、映画館や百貨店など大規模商業施設については、現状のままとする方向で調整が進められていることがわかった」(参考:https://www.fnn.jp/articles/-/207176)とのこと。もしその通りならば、とりあえず映画興行に関しては最悪の事態は避けられることになる。

 先週末の動員ランキングは、レジェンダリー・ピクチャーズのモンスターバース・シリーズ4作目となる『ゴジラvsコング』が土日2日間で動員29万3000人、興収4億6400万円をあげ初登場1位に。初日からのオープニング3日間の動員が39万2343人、興収6億1890万5150円。この成績は、モンスターバースの前作となる2019年5月公開の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の約24%ダウン。日本では東京での3度目の緊急事態宣言の影響もあって5月14日から7月2日に公開延期となった本作。当初の5月公開の時点でも本国公開から2ヶ月遅れだったわけだが、やはりこの手のブロックバスター作品は本国公開と日本での公開日をできるだけ近づけて、作品の評判やネタバレが出回る前に公開した方がいいのではないだろうか(前作は日米同時公開)。もっとも、本作はアメリカでも(アメリカでの)配給元ワーナー及び配信元HBO Maxの方針変更によって公開日が二転三転しただけに、昨年からの公開延期作によって公開スケジュールが渋滞している東宝としてはこれが精一杯だったのだろう。

 4度目の緊急事態宣言、そして緊急事態宣言下でのオリンピック強行開催によっていろんなことが麻痺してしまいそうになるが、『ゴジラvsコング』を皮切りに、本日から『ブラック・ウィドウ』が公開、来週からは『竜とそばかすの姫』が公開と、映画興行はサマーシーズンの真っ最中。レジャーやレクリエーションとしての映画は、映画館だけが営業していればいいというものではない。夕暮れになってから映画館に出かけて、その帰りに美味しいディナーを食べたり、ビアホールでちょっと一杯ひっかけたりという日常は、きっとこの夏には戻ってこない。「愚民どもは家にこもってテレビでオリンピックを見てろ」とでも政府は言いたいのだろうが、そんなのまっぴらごめんだ。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「集英社新書プラス」「MOVIE WALKER PRESS」「メルカリマガジン」「キネマ旬報」「装苑」「GLOW」などで批評やコラムやインタビュー企画を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『ゴジラvsコング』
公開中
出演:アレクサンダー・スカルスガルド、ミリー・ボビー・ブラウン、レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、小栗旬、エイザ・ゴンザレス、ジュリアン・デニソン、カイル・チャンドラー、デミアン・ビチル
監督:アダム・ウィンガード
脚本:エリック・ピアソン マックス・ボレンスタイン
製作:レジェンダリーピクチャーズ ワーナーブラザース
配給:東宝
(c)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

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