『おかえりモネ』内野聖陽×浅野忠信が体現する震災後の苦悩 再び朝岡の言葉がよみがえる

『おかえりモネ』が描く震災後の苦悩

「なんにも失くしてない俺は、何ができんだ」

 あの日、そういって咽び泣いた耕治の姿を百音は思い出していた。「何もできなかったと思っているのはあなただけではありません」という朝岡(西島秀俊)の言葉通り、百音だけでなく、美波を助けられなかった新次も亮も、親友を救えなかった耕治も、そしてそれをそばで見ていた家族も、あの震災で生き残った人たちはみんな同じ“後悔”を抱えている。

 沈む百音の心に一筋の光を落としたのは、菅波(坂口健太郎)の電話だ。何も事情を知らない菅波の「縄跳びは1日5分」といういつもと変わらないうんちくが何だかホッとする。

 未だ癒えない新次や亮の心の傷。百音にはまだどうすることもできない、気象予報士になったからといって誰かを救えるかどうかもわからない。けれど、何もできなかった後悔が種となって百音の中に根付き、時間をかけて芽吹こうしている。今はただ、花を咲かせられるように小さくとも目の前のことをやるしかない。いつか何かをできる自分になるために。菅波のアドバイス通り縄跳びを飛ぶ百音の真剣な顔つきに、そんな覚悟が見えた。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:清原果耶、内野聖陽、鈴木京香、蒔田彩珠、藤竜也、竹下景子、夏木マリ、坂口健太郎、浜野謙太、でんでん、西島秀俊、永瀬廉、恒松祐里、前田航基、高田彪我、浅野忠信ほか
脚本:安達奈緒子
制作統括:吉永証、須崎岳
プロデューサー:上田明子
演出:一木正恵、梶原登城、桑野智宏、津田温子ほか
写真提供=NHK

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