キャラ良し、アクション良し、筋肉良し! DCで最も純粋なエンタメ作品『アクアマン』

エンタメ性も筋肉も爆発的『アクアマン』

 アーサーがついにアクアマンのスーツを身に纏って登場するときも、それから一気に描かれる海底内の甲殻類軍と魚人軍の戦争も、王道中の王道を行きながら出し惜しみを一切せず、とことんかっこよく描き切っている。サメに乗って攻め入る魚人の姿にも痺れるし、アーサーが海の生物とコミュニケーションをとって軍団を引き連れてくるシーンとか、「うおおおっ!」と叫びたくなるほどテンションが上がる。このスケールの大きさも、ジェームズ・ワン監督ならではのもの。『ソウ』や『死霊館』などホラー映画畑で活躍することの多い彼だが、『ワイルド・スピード SKY MISSION』でもその手腕を発揮した通り、この人にアクション映画をやらせたら絶対間違いないのだ。彼は現在公開中の『モータルコンバット』の製作陣にもその名を連ねている。

 アメコミ映画、特にユニバース化されている作品は他作品の関連や原作知識など求められる部分も多い中、本作はこれだけ観ても十分にアクアマンを理解できるし、楽しめる。そういった一見さんの観やすさ、そして辛気臭さのない単純な作品性と迫力ある画はリピーターを生み出し、興行収入に繋がったのだろう。ただ、ちゃんとカッコよくて、ちゃんと面白い。DC映画の中で思い切って作られた本作の王道的エンタメ性は、後のDCラインナップ……『シャザム!』や『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』、『ワンダーウーマン 1984』に受け継がれている。楽しいヒーロー映画はマーベル、重めのヒーロー映画はDCみたいな棲み分けがなくなり、DCに新風を吹き込んだ転換的な作品でもある『アクアマン』。一人はもちろん、どんな相手とも一緒に観られて、10人いたら8人は楽しめるだろうという、奇跡のような映画である。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。InstagramTwitter

■放送情報
映画『アクアマン』
フジテレビ系『土曜プレミアム』にて、7月3日(土)21:00〜23:10放送
監督:ジェームズ・ワン
出演:ジェイソン・モモア、アンバー・ハード、ニコール・キッドマン、パトリック・ウィルソン、ウィレム・デフォー、ドルフ・ラングレン
吹き替え声優:安元洋貴、田中理恵、多田野曜平、中村悠一、広瀬彰勇、濱野大輝、沢城みゆき
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