初登場6位『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』 文句なしの続編なのに苦戦

『クワイエット・プレイス』続編が興行で苦戦

 自分が引っかかっているのは、『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』は前作を見た人なら100%満足するに違いない、ウェルメイドで面白い第一級のハリウッド映画であることだ。現在公開中の作品でいうと『クルエラ』や『Mr.ノーバディ』、ちょっと前の作品でいうと『21ブリッジ』や『ジェントルマン』といった、この「ウェルメイドで面白い第一級のハリウッド映画」が、以前からそうした傾向はあったものの特にパンデミック以降、日本でまったく当たらなくなっているのだ(ディズニー作品に関しては再三触れてきたように別の事情もあるが)。

 いまだ感染状況やワクチンの接種状況は予断を許さない状況とはいえ、日本のハリウッド映画興行を取り巻く状況は、もうパンデミックのせいにしているわけにはいかないフェーズに入っているのではないか? これは皮肉でも冗談でもなく真顔で進言させてもらうが、ハリウッドではメジャースタジオの買収が続き、今後は撤退さえありえるこの状況下で、さすがにもうお金を払って映画館に行くような人は誰も見てない民放の情報番組やスポーツ新聞を呼んで、めるるとダチョウ倶楽部が登壇する広告代理店仕切りの公開直前イベントとかをやってる場合ではない。別にそれが「苦戦の原因」とは言わないが、作品にとって何一つプラスになっていないのは明らかだろう(何年も前からずっと書いてきたことだが)。外国映画、特にメジャースタジオの作品の宣伝は、本当に抜本的な改革が必要だ。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「集英社新書プラス」「MOVIE WALKER PRESS」「メルカリマガジン」「キネマ旬報」「装苑」「GLOW」などで批評やコラムやインタビュー企画を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』
全国公開中
監督・脚本・製作・出演:ジョン・クラシンスキー
製作:マイケル・ベイ、アンドリュー・フォーム、ブラッド・フラ-
出演:エミリー・ブラント、ミリセント・シモンズ、ノア・ジュプ、キリアン・マーフィー、ジャイモン・フンスー
配給:東和ピクチャーズ
(c)2021 Paramount Pictures. All rights reserved.
公式サイト:https://quietplace.jp/
公式Twitter:@Quietplace_JP

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