『コントが始まる』マクベス、ついに解散 菅田将暉演じる春斗が流した涙の意味

『コントが始まる』菅田将暉が流した涙の意味

 果たしてコントが人生だったのか、人生がコントだったのか。不思議な因果応報で、解散の3カ月後に春斗は水のトラブルを解決する人になっている。第1話の開幕コント「水のトラブル」をなぞるように、作業着をまとってラーメン屋に足を運ぶ春斗がそこにはいる。聞いて爆笑する潤平の気持ちもわかる。いやはや、これまでのどのコントよりも笑える場面だと思う。

 里穂子と初めて出会った際に、酔っ払いの彼女にあげたミネラルウォーターが次の日の朝にはメロンソーダになっていたことがあった。その不思議な体験をネタにしたのが、コント「水のトラブル」だった。はたまた、春斗の兄・俊春(毎熊克哉)がマルチ商法に引っかかり、怪しい水をライブ会場まで持ってくる場面もあった。その体験は、コント「奇跡の水」となった。最終話では同じ描写が反復されるが、俊春はもうあのときの彼とは違う。奇跡の水は普通の水になっている。

 濁っていた池の水が、透明に生まれ変わっているのを春斗が確認する場面がある。春斗が将来の道を決めた決定的なきっかけといえば、そこしか思い浮かばない。春斗に残ったものといえば、ずばり「水」(のようなもの)だったのではないか。掴みきれないけど、確実にそこにあるもの、あったものとしての「水」。あるときはミネラルウォーターがメロンソーダになり、またあるときは普通の水が奇跡の水になる、そんな流動的で可変的、循環する存在としての「水」。マクベスの10年を経て大事な仲間と出会い、大事なファンを得たからこそ、春斗はなんにでもなれるようになったのだ。

「それはきっと、このじゃんけんが終わってしまったら、もう二度とこんなアホみたいな時間が訪れないんじゃないかという恐怖でもあった」

 冷蔵庫獲得をかけたじゃんけんで菅田将暉が見せた涙は忘れられないものとなった。3人が3人とも別の手を出してあいこになるじゃんけんは、2人や4人以上であいこになるよりも特別感があるが、そんなことができるのももうこれで最後。奇跡的な同世代の役者たちが集まり、奇跡的な演技を見せてくれたこと。それがただただ幸福なことだったのだと、菅田将暉が流す美しい涙の水の、その不可逆的な性質が証明していた。

■原航平
ライター/編集。1995年、兵庫県生まれ。Real Sound、QuickJapan、bizSPA!、芸人雑誌、logirlなどの媒体で、映画やドラマ、お笑いの記事を執筆。Twitterブログ

■配信情報
『コントが始まる』
Huluにて配信中
出演:菅田将暉、有村架純、仲野太賀、古川琴音、神木隆之介
脚本:金子茂樹
演出:猪股隆一、金井紘(storyboard)
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:福井雄太、松山雅則(トータルメディアコミュニケーション)
主題歌:あいみょん「愛を知るまでは」(unBORDE/Warner Music Japan)
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/conpaji/
公式Twitter:@conpaji_ntv

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