マーベルドラマ『ロキ』押さえておきたい4つのポイント キーとなるのは“マルチバース”?

ドラマ『ロキ』で押さえておきたいポイント

MCUドラマ『ロキ』はどんな物語に?

 現時点で明かされているドラマシリーズ『ロキ』のあらすじを確認しておこう。まず、『インフィニティ・ウォー』で命を落としたはずのロキが、なぜドラマの主人公として復活するのか。その経緯は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年)で起きた1つの事件から繋がっている。

 サノスが破壊したインフィニティ・ストーンを再び集めるため、アベンジャーズの面々は過去に戻ってそれぞれのストーンを回収することに。トニー・スターク、スティーブ・ロジャース、スコット・ラングの3人は、『アベンジャーズ』の戦いがあった2012年のニューヨークへ戻り、ソーが四次元キューブに収められたスペース・ストーンをアスガルドに持ち帰る前に、それを取り返そうとしていた。しかしそこで予期せぬ出来事が起こり、捕らえられていたロキが四次元キューブを使ってワームホールから逃亡してしまったのだ。今回のドラマの主人公となるのは、“この”ロキだ。つまり、『ダーク・ワールド』でソーと共闘する前の純然たるヴィランとしてのロキが、新たに時空を超えて活躍することになる。

 ドラマでは、四次元キューブを再び盗んだ直後、ロキはタイム・ヴァリアンス・オーソリティ(Time Variance Authority=TVA)と呼ばれる組織から呼び出しを受ける。時間の流れを守ることを使命とするTVAは時空間の外部に存在する官僚組織で、ロキは時系列に対する犯罪の責任を取るように求められるのだ。そこで彼は“現実から削除”されるか、さらに恐ろしい脅威の逮捕に協力するかの決断を迫られる。TVAのエージェントで、特に危険な時間犯罪者の捜査を専門とするメビウス(オーウェン・ウィルソン)は、ある出来事がきっかけでTVAが脅威にさらされるなか、「他人に化け、嘘で他人を翻弄する」ロキの能力が必要と判断し、彼と手を組むというリスクを冒すことを決意したのだ。ロキに与えられた任務は、タイムトラベルで実際に起きた重大な事件の“歴史”を変え、“世界の時間”を修復するというもの。しかしその過程で、人類の歴史に隠された重大な謎が明らかになるという。

 もちろんTVAのなかには、信用ならないロキを任務につかせることに難色を示す者もいる。出世街道をひた走るラヴォーナ・メンスレイヤー(ググ・バサ=ロー)は、メビウスのやり方に納得できないものの、任務でロキと関わることになる。規則を重視する真面目な性格で、ロキを一切信用していない様子のハンターB-15(ウンミ・モサク)は、メビウスの自由放任主義的な行動に疑問を抱いているようだ。はたしてTVAの任務でロキが対峙するのは、どんな脅威なのだろうか。そして人類史に隠された重大な謎とは、いったい何なのだろうか。

キーポイントは“マルチバース”

 『エンドゲーム』でのインフィニティ・ストーン奪還作戦から、MCUのフェーズ4では、“マルチバース”がキーポイントになると言われてきた。時空間を隔てて複数の違った現実が存在することを示すこの設定は、フェーズ3最終章となった『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年)で早速登場するかと思いきや登場せず、ファンは一体どの作品で本格的に導入されるのか首を長くして待っていた。今回のドラマ『ロキ』は、『エンドゲーム』で示された『アベンジャーズ』以降のロキがたどる別の現実、つまり“マルチバース”を描く作品となっている。すでに触れたとおり、本作の主人公となるロキは、『アベンジャーズ』以降『インフィニティ・ウォー』までの出来事を経験していない、私たちが知っているロキとは“別人”だ。本来の時間軸では、その後ヒーローたちと共闘するようになった彼だが、今回のドラマの時間軸ではどのように変わっていくのだろうか。彼はTVAの任務を通して、さらに別の現実を行き来することになるだろう。その行く先には、ほかのMCUキャラクターの別バージョンも存在するかもしれない。そんなサプライズにも期待が高まっている。

ドラマ『ロキ』ではトム・ヒドルストンの魅力が炸裂!?

 ロキをここまでの人気キャラクターにした理由の1つは、トム・ヒドルストンの好演によるところが大きいだろう。実際、当初ロキの出番はソー単独2作目『ダーク・ワールド』で終わる予定だったという。しかし試写で彼の最期を観た観客たちはそれを信じず、その反応を見たマーベル・スタジオは、ロキがアスガルドの玉座に座るポストクレジットシーンを追加した。そこからのロキの活躍は知っての通りだ。ロキのアイデンティティや成長を描くと言われる本作で、トム・ヒドルストンは製作総指揮も兼任しており、2019年8月のEntertainment Weeklyのインタビューでは「みなさんがかつて見たことのないロキをお見せすることになります」と自信を覗かせていた。ロキという一癖も二癖もあるキャラクターをときにユーモラスに、ときに悲しく演じてきた彼は、『アベンジャーズ』直後のまだ精神的な成長を迎えていないロキを再び演じ、本来の時間軸とはまた別の経験を経て、変わっていくロキを見せてくれるのだろう。

マーベル・スタジオ『ロキ』| US版スポット 60秒|Disney+ (ディズニープラス)

 『ワンダヴィジョン』で先の読めない展開を見せ、『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』でキャラクターの成長を描いたMCUが贈る、新作ドラマ『ロキ』。大人気キャラクターを主人公に迎え、本格的にマルチバースを描くことになる作品だけに、これまで以上に高い期待と大きな注目が寄せられている。トム・ヒドルストン演じるロキが、どんな嘘やいたずら、裏切りで魅せてくれるのか。6月9日からの配信を楽しみに待とう。

■瀧川かおり
映画/海外ドラマライター。東京生まれ、グラムロック育ち。幼少期から海外アニメ、海外ドラマ、映画に親しみ、10代は演劇に捧げる。趣味は編み物ほか手芸。金曜の夜に酒を飲みながら映画や海外ドラマを観るのが毎週の楽しみ。

■配信情報
ディズニープラス オリジナルドラマシリーズ『ロキ』
ディズニープラスにて、6月9日(水)16:00〜日米同時配信
監督:ケイト・ヘロン
出演:トム・ヒドルストン、オーウェン・ウィルソン、ググ・バサ=ロー、ウンミ・モサク
(c)2021 Marvel
公式サイト:https://disneyplus.disney.co.jp/program/loki.html

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