2021年は菅田将暉イヤーに! スターにもバイプレイヤーにもなれる、特異な才能を読む

菅田将暉が“オリジナル“である理由

 ある作品で少年のような表情を見せたと思えば、また違う作品では年相応の落ち着いた雰囲気を醸し出す。ミステリアスでクールな二枚目を演じたかと思えば、ばかに実直で泥くさい三枚目にも成り代わる。脇に立てば主演を引き立て、主演に立てば驚異的なスターパワーを放つ。菅田将暉という俳優を見ていると、俳優に必要な素質とはどんな役柄にも染まりながらも決して“個”を崩さない、“汎用性と独自性の両立“なのだと改めて感じてしまう。

 現在放送中の日本テレビ系列ドラマ『コントが始まる』では、鳴かず飛ばずのお笑いトリオ「マクベス」のメンバーのひとり高岩春斗を演じている菅田。今年1月に公開され大ヒットを記録した『花束みたいな恋をした』では2010年代カルチャーにどっぷり浸かった主人公を演じ、6月11日から公開される『キャラクター』では殺人事件を目撃したことから売れっ子漫画家への扉を開いてしまう漫画家を演じるなど、この上半期だけを掬いあげてもすべて違うタイプの菅田将暉がそこに存在し、その一方で常に菅田将暉以外の何者でもない無二の才を見せつける。

 そんな菅田のキャリアを振り返ってみれば、たしかにデビュー作が『仮面ライダーW』という時点で、スター俳優特有の我の強さを持たない俳優に成長するということは証明されていたといえよう。見せ場となる場面では顔が隠れ、“仮面ライダー”というヒーローそれ自体に真実味を持たせなくてはならない。同シリーズでは平成期に入ってから副次的に主人公格の俳優人気が高まり、若手男性俳優のブレイク登竜門的な位置付けになったわけだが、オダギリジョーや佐藤健、瀬戸康史に竹内涼真と、たしかに他の“ライダー出身俳優”も皆、与えられた役に染まりきることができるセンスの持ち主ばかりだ。

 また菅田の映画出演歴をたどってみると、ひたすらそのバラエティの豊かさに驚かされる。『暗殺教室』での赤羽業や『銀魂』での志村新八といった“番手役”で良い味を出し、『帝一の國』や『アルキメデスの大戦』では一風変わった主人公を演じる。その一方、青山真治監督の『共喰い』における負のエネルギーを爆発させるようなナイーブさや、原作コミックから飛び出してきたようなエキセントリックな魅力を放った山戸結希監督の『溺れるナイフ』と、強烈な作家性に満ちた世界観にもうまく浸透していく。もちろんそれは抜群のコメディセンスをもって演じた福田雄一監督の『明烏 あけがらす』でも同様だ。単なる“カメレオン俳優”ではなく、もはや俳優としての技量を測るための“基準点”のようなものが存在していないということが、菅田の特異性というわけだ。

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