『Vivy』が問う、映像における音楽の重要性 『Re:ゼロ』作者ら豪華布陣による挑戦

『VIVY』が問う映像における音楽の重要性

八木海莉らの、けれんみの無い歌声が物語とマッチ

 音楽を担当しているのは、数多くの人気アニメの劇伴を手がけてきた神前暁。アニメ『らき☆すた』オープニングテーマ「もってけ!セーラーふく」は有名で、花澤香菜やももいろクローバーZなどへの楽曲提供も行うほか、2019年に主演・横浜流星の映画『いなくなれ、群青』で、実写作品の劇伴も手がけている。『Vivy』ではオープニングテーマ「Sing My Pleasure」をはじめ、劇中歌、劇伴と、ほぼ全ての音楽を手がけている。

 オープニングテーマ「Sing My Pleasure」をはじめ、劇中歌の歌唱パートは、声優ではなくメジャーデビュー前のシンガーが担当していることも、この作品の大事なキーだ。

 ヴィヴィの歌を担当する八木海莉は、15歳の時に夢を追いかけ広島から上京した18歳。第3、4話に登場したエステラの歌唱を担当した六花と、エリザベスの歌唱を担当した乃藍は、ゲーム『Fate/Grand Order』シリーズの楽曲を歌った経緯がある。第5、6話に登場したグレイスの歌唱を担当した小玉ひかりは、ピアノの弾き語りで活動する21歳のシンガーソングライター。第7話から登場のオフィーリアの歌唱を担当したacane_madderは、声優・鈴木みのりへの楽曲提供なども行う音楽家だ。また、第1話に登場した汎用型歌姫AIの歌唱は、舞台役者やゲーム『Fate/Grand Order』シリーズなどゲームやアニメの楽曲を歌っているコツキミヤが担当している。

 原作の存在しないオリジナル作品において、人気の有名シンガーを使うことでインパクトや話題性を狙う手法もあるだろうが、どうしても中の人の顔が浮かんでしまうデメリットがあることは否めない。歌姫AIが主人公の本作にとって、それは致命的だと言える。あえてまだあまり世に知られていないシンガーを起用することで、彼女たちのけれんみの無い新鮮でみずみずしい歌声が、与えられた使命を最後まで全うせんとするAIたちのピュアさとも重なり、より物語に没入することができる。

 新鮮な歌声の重要性は、『マクロス』シリーズで歌姫を一般からオーディションしたことでも立証済み。今をときめくLiSAのデビューも、アニメ『Angel Beats!』のキャラクターの歌唱パートを担当したことがきっかけだった。『Vivy -Fluorite Eye's Song-』のストーリーのゆくえはもとより、八木海莉をはじめとした歌姫たちの、けがれの無い無垢な歌声にも注目の作品だ。

■榑林史章
「山椒は小粒でピリリと辛い」がモットー。大東文化大卒後、ミュージック・リサーチ、THE BEST☆HIT編集を経て音楽ライターに。演歌からジャズ/クラシック、ロック、J-POP、アニソン/ボカロまでオールジャンルに対応し、これまでに5,000本近くのアーティストのインタビューを担当。主な執筆媒体はCDジャーナル、MusicVoice、リアルサウンド、music UP’s、アニメディア、B.L.T. VOICE GIRLS他、広告媒体等。2013年からは7年間、日本工学院ミュージックカレッジで非常勤講師を務めた経験も。

■放送情報
『Vivy -Fluorite Eye's Song-』
TOKYO MX:毎週土曜23:30~
とちぎテレビ:毎週土曜23:30~
群馬テレビ:毎週土曜23:30~
BS11毎週土曜23:30~
MBS:毎週土曜27:08~
メ~テレ:毎週土曜26:30~
北海道放送:毎週土曜25:58~
RKB毎日放送:毎週土曜26:00~
AT-X:毎週月曜23:00~
※全13話
※放送開始日・放送日時は編成の都合などにより変更となる場合あり
原作:Vivy Score
監督:エザキシンペイ
助監督:久保雄介
シリーズ構成・脚本:長月達平、梅原英司
キャラクター原案:loundraw(FLAT STUDIO)
キャラクターデザイン:高橋裕一
サブキャラクターデザイン:三木俊明
メカデザイン:胡拓磨
総作画監督:高橋裕一、胡拓磨
美術監督:竹田悠介(Bamboo)
美術設定:金平和茂
色彩設計:辻󠄀田邦夫
3Dディレクター:堀江弘昌
撮影監督:野澤圭輔(グラフィニカ)
編集:齋藤朱里(三嶋編集室)
音響監督:明田川仁
音楽:神前暁(MONACA)
アニメーション制作:WIT STUDIO
(c)Vivy Score / アニプレックス・WIT STUDIO
公式サイト:https://vivy-portal.com/
公式Twitter:https://twitter.com/vivy_portal

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