三浦翔平、『M』に続き『あのキス』でも“狂気”の怪演 松坂桃李と相性抜群のぶつかり合い

三浦翔平、『あのキス』でも狂気の怪演

 だが巴の感情は置いてけぼりに、桃地と高見沢の奇妙な対決が始まる。優しさがウリの桃地に、巴のことを知り尽くした強敵として立ちはだかる高見沢。2人のバトルはなんとフラダンス対決にまで発展。穏やかなフラ教室は、むさ苦しい男2人の“顔芸ダンスバトル”で戦場と化す。ハイスペックで頼り甲斐のある高見沢と、頼り甲斐はないものの優しさですべてを包み込む桃地。巴の母・妙(岸本加世子)が桃地に諭したように、なるほどそれぞれの良さはあるが、どちらもズレていることには変わりない。

 そんな2人の様子を見かねたオジ巴は、桃地に『SEIKAの空』の最新話を送る。そこでは桃地に似たキャラクター・もやおの優しさがクローズアップされ、「お前(桃地)がいるから強くなれる」という巴自身の思いが込められていた。泣きながら巴の自宅に走る桃地。しかし、そこで巴が高見沢にキスされた場面を目撃してしまう。蟹釜ジョーが生きていることを「週刊少年マキシマム」の同僚に信じてもらえず、退職願を出してまでやり直しを図る高見沢の熱い想いに、桃地は果たして打ち勝つことができるのか。

 今週は桃地と高見沢を演じる、松坂桃李と三浦翔平の振り切った演技が印象的な回となった。顔は至って爽やかなイケメンなのに、一つひとつの言動がふざけている高見沢はもはや狂気の沙汰。2017年に放送されたドラマ『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)以降、同じく鈴木おさむが脚本を務めた『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系)をはじめ、かつて演じていた“王道イケメン”の枠を超えた怪演が話題の三浦が本領を発揮している。特に印象的なのは、その瞳。元々、三浦は感情の読めないミステリアスな瞳をしているが、役柄やシーンによって瞳の“色”を変えられる。今回のように常軌を逸した役どころではどこを見ているのかわからない機械的な瞳になり、コミカルさが増す。一方シリアスなシーンでは、途端に感情がぽっと瞳に宿るのだ。

 松坂の場合は桃地の弱々しさや巴と高見沢の関係性を目の当たりにした時の衝撃を、うろたえる表情や小刻みな震えで物語っていく。一挙手一投足から桃地の不器用な優しさが滲み出ており、そんな見ているうちに愛おしさが増す彼の側で、オジ巴が回を追うごとにキュートになっていくのを実感する。三浦と同じく、映画『不能犯』や『娼年』など挑戦的な役柄にも積極的に取り組んでいる松坂。2人の緩急ある演技が、とにかく笑えて最後はちょっと切なくなるような心温まるラブコメディを作り上げている。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。

■放送情報
『あのときキスしておけば』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜放送(一部地域で放送時間が異なる)
出演:松坂桃李、麻生久美子、井浦新、三浦翔平、岸本加世子、MEGUMI、猫背椿、六角慎司、阿南敦子、うらじぬの、角田貴志、藤枝喜輝、川瀬莉子、板倉武志、窪塚愛流
脚本:大石静
演出:本橋圭太、日暮謙、YukiSaito
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、本郷達也(MMJ)
制作:テレビ朝日、MMJ
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/anokiss/

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