『仮面ライダー』半世紀にわたるヒーローの足跡 “昭和ライダー”シリーズの歩みを振り返る

『仮面ライダー』半世紀の足跡を辿る

 4年間の沈黙を破って復活した『仮面ライダー(新)』(1979年)は、スカイライダーという通称が示す通り、シリーズ中では初めて空を飛ぶ能力を備えている。原点回帰を目指した序盤は、怪人の怪奇さやハードなストーリー展開を強調していたが、放送半年を経て大幅に路線変更。番組中盤から先輩ライダーの客演が増えてきて、最終回はネオショッカーの大首領を倒すべく8人ライダーが集まる。

 惑星開発用の改造人間である『仮面ライダースーパー1』(1980年)は、もともと平和を目的とした出自だったが、闇の王国ドグマとの戦いに身を投じる。スーパー1は、機能の異なる5種類の腕・ファイブハンドに加え、搭乗バイクにハーレー型のVマシン、オフロード型のブルーバージョンという2台のマシンを駆るなど装備が豊富なライダーである。途中から放送時間帯の変動に合わせて敵組織が変わり、子どもたちが活躍するジュニアライダー隊が組織されたり、敵幹部のコミカルさが強調されるなど、より児童層にアピールする作風へチェンジする。

 『仮面ライダー』から『仮面ライダーストロンガー』までの5作には共通して、ライダーの正体を知る協力者にして、良き理解者の親父さん役に立花藤兵衛が登場したが、『仮面ライダー(新)』と『仮面ライダースーパー1』の2作には、これに該当する支援者キャラクターとして谷源次郎が出ている。

 テレビシリーズではなく単発スペシャルの登場となった10人目のライダー、仮面ライダーZXは、児童誌のグラビア連載やラジオ番組など約1年間のイベント展開を経て、1時間の正月特番『10号誕生! 仮面ライダー全員集合!!』(1984年)で初の映像化を果たした。V3、ライダーマン、スーパー1の3人は変身前の俳優が出演し、10人ライダー対怪人軍団のバトルや、先輩ライダーが見せる記録映像という体裁で歴代シリーズのハイライトシーンも織り込まるなど、盛りだくさんで豪華なスペシャル番組となっている。

 『仮面ライダーBLACK』(1987年)は、『スーパー1』放送終了から6年ぶりに復活した仮面ライダーである。幼い頃から兄弟同然に育てられた親友同士が、共に暗黒秘密結社ゴルゴムの改造手術を受け、片やゴルゴムから脱走した正義のヒーロー、片やゴルゴムの世紀王として立場を違えた過酷な戦いが始まる。従来の仮面ライダーと違いマフラーやグローブ、ブーツを排したスタイリッシュなデザインと、親友同士の殺し合いという孤独でハードなストーリーは好評を博し、主人公の南光太郎が引き続き出演する続編が始まった。

 『仮面ライダーBLACK RX』(1988年)は、続編といっても雰囲気は前作と大きく変わり、光の剣や銃など武器の装備、専用マシンはオフロード型バイクと自動車の2台、外見の違うライダーに多段変身を果たすなど、平成以降の仮面ライダーシリーズでは恒例化している要素に先鞭をつけた作品でもある。RXの最後の敵・クライシス皇帝の声は、昭和の仮面ライダーシリーズの多くで敵首領の声を演じた納谷悟朗が担当している。

 『仮面ライダーBLACK RX』放送期間中に、夕張市のイベント用に製作された3D短編映画が『仮面ライダー世界に駆ける』(1989年)だ。仮面ライダーBLACKもRXも、南光太郎が変身するヒーローであるという設定を巧みに使い、同じ主人公が変身する複数のライダーが同一画面に集合する。平面の2D映像で観ても、「ここは立体効果を意識して撮ったんだろうな」と分かるアクションが多く、17分という尺にしてはお祭り作品として申し分ない盛り上がりを見せる。

 このように昭和ライダーとひとくちに言っても、各シリーズごとの特色は異なるし、放送期間中の紆余曲折の中で第1話と最終話で作品の印象が随分違って見えるものもある。最後まで初志貫徹した作品もあれば、テコ入れや、路線変更をした作品もあり、そこに伴う感想も人それぞれだろう。しかしそのいずれもが、当時の制作者たちの苦心の中から生まれた創意工夫の結果である。そんなことを考えながら、50周年という半世紀にわたるヒーローの足跡を振り返るのも良いだろう。

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■放送情報
仮面ライダー生誕50周年「4Kリマスターで甦る!昭和ライダー THE MOVIE Vol.3」
『仮面ライダー』第1話〜第98話
東映チャンネルにて6月放送
出演:藤岡弘、佐々木剛、小林昭二、中江真司(ナレーション)
監督:竹本弘一 他
脚本:伊上勝 他
製作年:1971/30 HD/CC

『仮面ライダーV3』第1話〜第52話
東映チャンネルにて6月放送
出演:宮内洋、小林昭二、小野ひずる、山口豪久、納谷悟朗(声)
監督:山田稔、奥中惇夫、塚田正熙、田口勝彦、折田至、内田一作
脚本:伊上勝、鈴木生朗、滝沢真理、塚田正熙 他
製作年:1973/30 HD/CC

『仮面ライダーX』第1話〜第35話
東映チャンネルにて6月放送
出演:速水亮、小林昭二、美山尚子、打田康比古、田崎潤
監督:折田至、内田一作、田口勝彦 他
脚本:長坂秀佳、伊上勝、鈴木生朗 他
製作年:1974/30 HD/CC

『仮面ライダーアマゾン』第1話〜第24話
東映チャンネルにて6月放送
出演:岡崎徹、小林昭二、松田洋治、松岡まり子、中田博久、納谷悟朗(ナレーション)
監督:塚田正熙 他
脚本:鈴木生朗 他
製作年:1974/30 HD/CC

『仮面ライダーストロンガー』第1話〜第39話
東映チャンネルにて6月放送
出演:荒木茂、岡田京子、小林昭二、納谷悟朗(声)、中江真司(ナレーション)
監督:塚田正熙 他
脚本:伊上勝 他
製作年:1975/30 HD/CC

『仮面ライダー(新)』第1話〜第54話
東映チャンネルにて6月放送
出演:村上弘明、田畑孝、塚本信夫、東隆明、桂都丸、田中功子、江口燁子、堀田真三
監督:山田稔 他
脚本:伊上勝 他
製作年:1979/30 HD/CC

『仮面ライダースーパー1』第1話〜第48話
東映チャンネルにて6月放送
出演:高杉俊介、塚本信夫、佐藤輝昭、田中由美子、早川勝也、幸田宗丸、西山健司、大月ウルフ、汐路章
監督:山田稔、広田茂穂 他
脚本:江連卓、土筆勉 他
製作年:1980/30 HD/CC

『仮面ライダーBLACK』第1話〜第51話
東映チャンネルにて6月放送
出演:倉田てつを、井上明美、田口あゆみ、堀内孝人、好井ひとみ、吉田淳
監督:小林義明 他
脚本:上原正三 他
製作年:1987/30 HD/CC

『仮面ライダーBLACK RX』第1話〜第47話
東映チャンネルにて6月放送
出演:倉田てつを、高野槙じゅん、赤塚真人、鶴間エリ、高畑淳子
監督:小林義明、蓑輪雅夫、小笠原猛 他
脚本:江連卓 他
製作年:1988/30 HD/CC

『10号誕生!仮面ライダー全員集合!!』
東映チャンネルにて6月放送
出演:菅田俊、宮内洋、高杉俊介、山口豪久、潮健児、佐々木剛(声)、納谷悟朗(声)、中江真司(ナレーション)
監督:山田稔
脚本:平山公夫
製作年:1984/46 HD/CC

『仮面ライダー世界に駆ける』
東映チャンネルにて6月放送
出演:倉田てつを、庄司浩和、高橋利道、好井ひとみ、藤木義勝、北村隆幸、渡辺実、高畑淳子
監督:小林義明
脚本: 浦沢義雄
製作年:1989/17 HD/ワイド

※放送日時は変更になる場合あり
(c)石森プロ・東映
公式サイト:https://www.toeich.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/toei_channel

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