パンデミックが開けたアメリカ 整備されつつある映画界の「新しいルール」

整備されつつある米映画界の「新しいルール」

 昨年11月以降、自社配給作品のHBO Maxでの劇場公開同日配信に邁進してきたワーナーでも、今週に入って大きな動きがあった。現在のワーナーの方針を強引に推し進めてきた米大手通信AT&Tは、17日に傘下のワーナーメディアと同業のディスカバリーが経営統合することで合意したと発表。正式な合併は2022年に入ってからの予定だ。AT&Tの支配下ですべての方針が決まっていったことに関しては、クリストファー・ノーラン監督を筆頭にクリエイターからも大きな反発があったが、映画関係者の間では、今後メディアサイドの独立性がこれまでより保たれるのではないかと期待されている。

 昨年からの試行錯誤の時期を経て、新しい業態へと生まれ変わろうとしているアメリカの映画業界。日本の映画業界はひとまず「2019年までの世界に戻る」ことを目指して、無能な行政に足を引っ張られながら足掻いている状況だが、果たして本当にそれでいいのだろうか? ディズニーも、ワーナーも、ソニーも、ユニバーサルも、パラマウントも、もう「2019年まで」とはまったく違うルールで動き始めている。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「集英社新書プラス」「MOVIE WALKER PRESS」「メルカリマガジン」「キネマ旬報」「装苑」「GLOW」などで批評やコラムやインタビュー企画を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『シャン・チー/テン・リングスの伝説』
9月3日(金)全国公開
監督:デスティン・ダニエル・クレットン
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2021

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